研究課題/領域番号 |
20K20128
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
根本 裕太郎 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部プロジェクト事業推進部IoT開発セクター, 副主任研究員 (60828086)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パタン・ランゲージ / デザイン方法論 / ウェルビーイング / IoT / ソシオテクニカルアプローチ / 参加型デザイン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、パタン・ランゲージの構築と使用が、デザインの主体、プロセス、解にどのような影響を与えるかを、実践を通じて明らかにすることである。研究方法として参加型アクション・リサーチを用いる。本研究の特徴は、デザイン解やデザイン主体の変容の分析観点として、ウェルビーイングの概念を導入する点である。今年度の主な実績は以下の通りである。 (1) 文献調査とフレームワーク構築 パラン・ランゲージ、ウェルビーイング、協働的デザイン等、関連する研究テーマの文献調査を幅広く行い、仮説を構築した。ウェルビーイングには様々な定義や要因があるが、快楽や幸福感よりも、能力の発揮と捉える方が本研究の課題に適している。その観点から、パタン・ランゲージを実践する活動に参加し、能力を発揮することで、デザイナーの自律性や有能感が向上する等の仮説を得た。また上記の文献調査に基づき、ウェルビーイングが醸成されるプロセスを、人と人工物の関わり、人と人の関わりの観点から、それぞれ概念的なフレームワークとして整理した。これらのフレームワークは、国際学会The 23rd International Conference on Engineering Designおよび2021 Frontiers in Serviceに投稿し、採択が決定した。 (2) 参加型アクション・リサーチに基づくデザインプロセスの分析 中小製造業1社において、デジタル化による品質改善を目的とした参加型アクション・リサーチを開始した。IoTによるデジタル化は、ソシオテクニカルな変革プロセスであり、技術的側面だけでなく社会的側面もデザインすることが必要である。今年度は、データ活用の土壌を技術的・社会的に整えたうえで、その経緯を広義のデザインプロセスとして捉え、分析した。その結果は、国内学会Designシンポジウム2021で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、2020年度にパタン・ランゲージの構築を済ませる予定であったが、COVID-19の流行にともない、本研究のフィールドである東京都IoT研究会の活動が縮小し、当初計画していたワーキンググループ設営を断念せざるをえなかった。代替策として、協力企業の選定および目的のすり合わせを行ったため、遅れが生じた。一方、文献調査等に計画以上の時間をかけ、国際学会で成果発表できる程度にまで概念整理を進められたことは、次年度の活動を円滑かつ深みをもって実施するために有益であったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、アクション・リサーチを継続し、パタン・ランゲージの構築と効果検証を目指す。本研究では、上記の製造現場において、データを活用した改善活動に焦点を当てる。作業にあたる当事者が行っている独自の工夫や知恵を、IoTデータと突き合わせて、パタンとして形式化し、知識共有することを想定している。それによる作業実践や当事者の心理状態の変化を縦断的に分析することにより、上記の仮説をはじめとしたパタン・ランゲージの効果検証を実現する。その結果から一般化できる学びを精査し、現代的な民主的デザインの方法論としてのパタン・ランゲージの有効性を考察する。加えて、今年度に整理したフレームワークに基づく定量調査を行い、周辺的なモデルの整備を進めることで、本研究の成果をより充実させる。以上による成果を、国内外の学術会議で発表することで議論を深め、Design Studies等、国際ジャーナルへの投稿につなげていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していたパタン・ランゲージの構築が次年度に持ち越しとなった。そのために物品費・人件費・その他印刷費を次年度に繰り越し、当初の予算と合わせて執行することとする。
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