研究実績の概要 |
大規模なイベントを捉えるための枠組みとしては、「メディア・イベント」研究(D. Dayan, E. Katz Media Events, 1992等)があり、新聞やテレビといったマスメディアがイベントの送り手となることを前提としてきた。特に20世紀のイベント研究は、送り手側の暴力的な権力性を暴いてきたといえる。 これに対し、筆者は、一時的に見知らぬ人々とともに一つのスクリーンを共有する参加者の体験に注目した。現在、映像イベントは日常の中に溶け込み、透明化している。メディア環境の変化と一時的な集合行為の日常化の進んだ2010年代のメディア・イベント研究として、本研究は公共空間における日常的な映像視聴イベントを総称した「ライブ・ビューイング(Live Viewing)」に着目する。 本研究ではフィールドワークおよび参加者からの聞き取りをおこなう予定であったが、イベントそのものが中止されたこことから、文献調査を中心としつつ、これまでにおこなってきた聞き取り調査のデータおよび参加者に関する報道・言説を再調査した。その際に、(1)オーディエンスの体験の検討および(2)一時的な出来事をめぐる理論の検討をおこなった。 (1)について、これまでのパブリック・ビューイングに参加する若者への批判を再検討しつつ、参加者たちの実践として、一時的な出来事への関与の方法である〈にわか〉性に着目した。この研究の成果は、書籍に分担執筆として掲載予定のほか、所属学会に関連して発表の場を企画中である。 (2)について、公共空間における一時的な出来事の理論的側面を考察するにあたり、「記念碑(公開遺産)」とメディア・イベント研究との接続として、万国博覧会における建造物の仮設性と恒久性について検討した。研究成果はオンライン開催の研究会で報告し、報告書へ寄稿した。
|