2020年度は、江戸時代の案内書に掲載された挿絵のマイクロコンテンツ化作業および地点情報との紐付け、追加のマイクロコンテンツ化対象選定を目的とし、9点の資料から情報を抽出、統一的なメタデータを付与した。その成果をデータセット「江戸観光案内」「江戸買物案内」として人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)のWebサイト上で公開した。 2021年度は、これまでマイクロコンテンツ化作業を行ってきた江戸の名所情報、江戸の商人情報を空間情報と紐付け、現在の緯度経度情報からアクセス可能にするための作業を進めた。「江戸観光案内」「江戸買物案内」に含まれるマイクロコンテンツをROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センターが構築した江戸に関するデータポータルサイト「edomi」で公開した。現実の空間上の情報とマイクロコンテンツを紐づける必要が生じたため、「文書空間識別子と実体空間識別子の双方向結合」というデータ整理方法を考案した。 また、人文学資料マイクロコンテンツ化の実践の別形態として、機械学習と連携しつつ美術作品の一部を抽出し、デジタル空間上で整理して様式分析を行う「GM法」を提案し、美術史研究の成果を得ることに成功、情報処理学会において山下記念研究賞を受賞した。 2022年度は、時空間情報を軸に複数のマイクロコンテンツを紐づける実験を行い、江戸時代の旅行者の行動をedomi上の各データと結びつけた「経路」メニューを公開した。またこれまでの成果を手法化し、幅広い人文学研究での活用・普及を試みた。人文情報学の学会において議論を行い、さらに個別に美術史・文学・アーカイブズ研究などの分野での利用の可能性と現状のシステムの課題を検討した。さらに本科研終了後に手法を継続・発展させるために、edomiでの公開を充実させ、マイクロコンテンツと時空間情報の結合を進めるべき資料を調査した。
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