研究課題/領域番号 |
20K20143
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
村上 久 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 助教 (20755467)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 予期 / 自己組織化 / 群集 |
研究実績の概要 |
本研究は歩行者集団において個々で行われている予期と集団的な秩序化の関係を探るための実験系を考案することを主たる目的の一つとしている。本年度は数人の歩行者の視覚的注意を逸らすことで予期の認知的能力に介入する群集実験の分析を行なった。その結果、確かにこの予期の介入により集団の秩序形成が遅延し、全体としての流量が低下することが明らかになった。さらに、注意を逸らされた歩行者だけでなくその周りの歩行者も歩行中の衝突回避が困難になることが明らかになった。そして両方の結果を合わせると、歩行者が一方だけではなくお互いに予期することで集団全体としての秩序化が促進されていることが示された。この群集における相互予期の重要性は、人の集団的意思決定、動物の群れ行動、群ロボットなど他の様々な集団的組織化の研究に新たな視座を与えることが期待される。これらの結果は論文としてScience Advancesで出版した。ただし、なぜ注意を逸らされていない歩行者まで衝突回避が困難になったかについては追加検証が必要である。また、集団の組織化のスムーズさは注意を逸らされた歩行者それ自身というよりも、その周囲の歩行者の意思決定により強く影響を受けることが示唆されたが、この点についてもより詳細な分析が必要となる。さらに、予期への介入に関してより一般性を持って言うためには、本実験で選んだ以外の方法も今後検証する必要がある。この他にも詳細は割愛するが本実験から集団行動と視覚的能力に関する複数の新たな問いと仮説が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
主たる目的の一つである予期の認知的能力に介入する方法の一つを具体的に提案した実験の分析結果を論文としてまとめられただけでなく、その結果上述のように当初想定していなかった新たな問いを複数産出することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
上述した課題を検証する追加分析を行い、また新しく持ち上がった問いを検証できる実験系を考案していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により出張ができなくなったため。次年度の出張および実験実施費でこれを用いる予定である。
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