今年度は、研究A(乳児期における優位性関係の評価およびその手がかりを探る)のデータ収集と整理を継続して行なった。また、研究C(優位性関係の処理・評価プロセスが社会的行動に与える効果の解明)に関する複数の研究を実施し、その研究成果の一部を査読付き国際学術誌で発表した。研究B(発達初期における優位性関係評価の神経的基盤を特定する)に関しては、接触型研究のため、引き続き新型コロナウィルス感染症の影響で遂行が難航していた。具体的な研究成果として次の数点が挙げられる。まず、乳児が「能力」という手がかりを用いて他者同士の優位性関係を判断するかについて、有効データのみでも合計100件以上収集することができた。現在データ解析中であり、国際的にもインパクトの大きい研究成果が期待される。次に、優位性関係の処理・評価プロセスが幼児の社会的行動にどのような影響を与えるかについて、5-6歳児を対象に複数の研究を遂行した。例えば、尊敬されるリーダーと怖がられるリーダーといった異なるタイプのリーダーに対して幼児が異なる評価を行っているだけではなく、尊敬されるリーダーのほうをより好んだりすることが幼稚園での実験によって明らかになった。また、別の研究を通して、幼児が超越的な能力を持つ他者に対して優位性を帰属することを複数の実験で明らかにした。さらに、オンライン調査を用いた研究を通して、女性より男性が偉いというステレオタイプが幼児期から出現することを示すデータを取得した。また、優位性関係の処理する認知能力の発達的起源に対する大人の信念を含めた、日米文化比較研究の成果も国際誌に掲載したうえで、プレスリリースを通して発信した。
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