研究課題/領域番号 |
20K20157
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 竜平 京都大学, こころの未来研究センター, 助教 (40869434)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 対人関係 / 恋愛 / 実験心理学 / 認知科学 |
研究実績の概要 |
親密な異性間関係の構築と維持に関する認知・神経機構について包括的理解を得ることを目指した本研究課題の第2年度では、脳機能イメージング手法を用いた心理実験から得られた知見を学術論文としてまとめ、心理学分野の国際学術誌であるPsychological Scienceにおいて報告した (Ueda & Abe, 2021)。 恋愛関係におけるパートナーは一般に「かけがえのない」人物であるとされ、ヒトの日常生活において様々な影響を及ぼす。そうした異性に対する恋心が、異性に対する全般的な関心とは異なった脳の情報表現を伴うかという問題については、脳活動の大小に基づいて議論を行う従来的な解析法単体では直接的に検討することが困難であった。本研究では認知課題遂行時の脳活動に対して機械学習を適用する先進的な解析法を用いることで、この問題の解決を試みた。結果から、報酬情報処理に関わる領域の脳活動パターンが、交際中の異性に関する情報とそれ以外の異性する情報の間で異なっていることが観察された。交際中の異性について特異的に見られるこのような脳の情報表現は、従来の心理学研究から報告されている、交際関係の長期的維持に貢献しうるいくつかの行動傾向(交際中の異性に対するポジティブな評価バイアス、あるいは絶えずその人のことを考えてしまう強迫観念的思考、他の異性人物に対する注意の引きつけが弱い等)を支える認知・神経機構であることが推測される。 今後の発展として、個人内における行動・神経機構の変動を明らかにするための縦断研究の実施や、他の社会的関係との類似点・相違点をより詳細に明らかにすることが重要であると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では得られた成果をまとめ、学術誌において報告することができたことから、本研究課題は概ね順調に進展していると考えられる。一方で、一部の実験計画について、当初予想していたよりも準備に時間を要しており、実験の実施に遅れが生じている。新型コロナウイルス感染症の蔓延を鑑み、現在ではオンラインによる心理実験環境も整備することで、効率的なデータ取得が行えるように努めている。今後は追加的検討を目的とした実験研究を実施する予定であり、現在はその研究計画の設計段階にある。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度で得られた知見に関し、今後は追加的検討を行うための実験研究を新たに実施する。並行して、異性間関係の構築を支える認知・神経機構の理解を目指した新規実験研究の実施を計画している。これらの研究から得られた知見は国内外の学術大会で報告し、得られたフィードバックを踏まえて学術論文として報告することを予定している。加えて、当該分野の知見をまとめた総説論文を執筆し、国際学術誌に投稿することを計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験研究の実施の一部が当初の計画よりも遅れており、次年度に実施することに変更した。これにより、主に人件費・謝金として予定していた金額が次年度使用額に含まれている。
|