研究実績の概要 |
本研究計画の目的は、特定の異性との長期的な関係の構築を動機づける「恋心」の体験について、脳と行動の両面から明らかにするということであった。最終年度に当たる本年度では、これまでに得られた知見を発展させる目的で、新たに「友人」との比較を行う実験デザインを設計し、機能的磁気共鳴画像法 (functional magnetic resonance imaging, fMRI)を用いたデータ取得を行った。結果から、友人と比較した場合に、恋愛パートナーに対して特異的な神経基盤が特定された。この研究成果を、第26回日本ヒト脳機能マッピング学会において報告した。今後は応用的なデータ解析を行い、成果を国際学術誌において報告することを計画している。 研究計画全体を通し、本研究では工夫された心理実験デザインと先進的な脳イメージングデータの解析手法を用いることにより、これまでの研究では十分な検討が行われていなかった、恋心の体験に特異的に観察される脳の情報表現についてのエビデンスを提示することができた (Ueda & Abe, 2021)。また、得られた知見を踏まえた上での当該研究の今後の展望について、総説論文を刊行した (上田, 2020; Ueda, 2022)。現在、さらに1件の総説論文を執筆している。本研究計画では「恋心」の脳と心のメカニズムを明らかにするという野心的な目標を設定したが、その成果は着実に蓄積されており、今後、さらなる検討に繋がることが期待できる。
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