本研究は,せん断流れがリン脂質二重膜に与える分子レベルでの影響を構造・力学的な面から明らかにし,理論モデルと比較することで理論的な予想の限界を示し,補間を行った点で学術的な意義がある.これらの成果は力学的負荷による生体膜の損傷というモデル化が難しかった部分について基礎的な知見を与えるもので,今後の膜損傷予測モデルの基盤になると期待される.また,近年の細胞工学技術の発展により,細胞単体や細胞組織を工学的に操作する必要性が増している.本研究で明らかにした力学的負荷と膜の関係は,外傷性脳損傷だけでなく,細胞操作時に細胞に与えられる負荷の許容範囲を力学的根拠に基づいて定める助けになりうる.
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