研究課題/領域番号 |
20K20175
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
中牟田 侑昌 崇城大学, 工学部, 助教 (30825766)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電力特性 / 力学特性 / 骨構造解析 / CT-FEA / インプラント設計 |
研究実績の概要 |
本研究は,世界的に新規性が高い積層ハイドロゲル電池のさらなる高出力化,力学特性や生体適合性の解明を行い,その後,得られた指標から人工発電器官を有する新型インプラントの設計・開発システムの確立を行うことが目的である.研究計画として,令和2年度は,まず積層ハイドロゲル電池の作製及び高出力化に取り組む.ゲルの厚み等が電池の出力に及ぼす影響を検討することで高出力が持続する電池の作製法を確立する.また,各ゲルの力学試験も並行して行い,力学特性を解明する.そして,得られた結果から骨用インプラントへの適用方法について検討し,CT画像を利用したFEA(CT-FEA)による設計法の確立に取り組む. 研究計画のもと研究を行った結果,本年度は,ゲルの厚さや直径等が異なる数種類のゲル電池を作製し,電圧及び電流の時間的変化を測定することに成功した.先行研究と同等以上の電力特性が確認できており,生体電池としての有効性が示唆されている.また,ゲル電池に使用されている4種類のゲルに対して圧縮力学試験を行ったところ,厚さ3㎜のゲルを2㎜まで圧縮しても破断には至らず,非常に良好な柔軟性や限界圧縮応力が示された.生体内に適用した際,力学的環境に対して優れた柔軟性を発揮し,破損する可能性も低いと考えられる.そして,医療機関から患者さんのCT画像データを入手すると共に骨構造解析ソフトウェアを導入し,CT画像から作成された3次元骨モデルを用いて有限要素解析(CT-FEA)を行い,骨用インプラントの設計や生体電池としてのゲル電池の適用方法について検討を行った. 上記のようにおおむね順調に研究活動を遂行できており,研究対象である積層ハイドロゲル電池の幅広い有効性が示されていると考える.引き続き研究活動を遂行しながら新型インプラントの設計・開発システムの確立を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲルの厚さや直径が異なる数種類の積層ハイドロゲル電池を作製し,最長30分間の電力測定を実施した.その結果,ゲルの厚みを薄くしながら接触面積を広げることで電力特性が向上することが示されており,積層ハイドロゲル電池の構造が電圧や電流といった電力特性に及ぼす影響について解明することができた. ゲル電池を構成している4種類のゲル(高塩分,低塩分,陰イオン選択,陽イオン選択)に対して,圧縮力学試験を実施した.直径6㎜,厚さ3㎜の試料を厚さ2㎜まで圧縮しても破断には至らず,優れた柔軟性や限界圧縮応力が示された.4種類のゲルそれぞれで力学特性は異なっており,生体内における力学的環境への適用方法を検討する際に有効なデータが得られたと考える. 医療機関から患者さんのCT画像データを入手すると共に骨構造解析ソフトウェアであるMECHANICAL FINDERを導入し,3次元骨モデルを用いたCT-FEAによる骨用インプラントの設計や生体電池としての適用方法について検討を行った. COVID-19の影響により渡航ができず、国際会議での研究成果の発表を行うことができなかった.しかしながら,国内会議において研究成果を発表することができ,研究内容について議論することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き,積層ハイドロゲル電池の高出力化や力学特性の解明,骨用インプラントの設計を行い,新たに生体適合性について解明し,最終的に人工発電器官を有する骨用インプラントの開発を行う予定である. 現在,研究しているハイドロキシアパタイトとβ-tcpで作製した担体に骨芽細胞を10万cell/scaffoldの割合で播種し,試作した骨用インプラントによる電気刺激を与えるサンプルと与えないサンプルにわけ,最長28日間の細胞培養実験を行う.細胞数,ALP活性,遺伝子解析,アリザリンレッド染色を行い,比較検討することで電気刺激が骨形成に及ぼす影響について検討する. そして,得られた研究成果から骨用インプラントの試作を繰り返し,生体内への適用方法について検討を行う.また,得られた結果をもとに学会発表や論文発表,特許出願・取得を行い,動物実験や臨床応用を考慮した令和4年度以降の研究計画を立案し,研究費の申請や臨床応用について検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により海外への渡航ができず,参加予定であった国際会議が中止となり,当初の予定よりも旅費の支出が抑えられた.しかしながら,国内においては,国内会議における発表を行うことができており,遠隔議論による研究者間での意見交換等を実施し,情報収集体制の強化を図ることができた.研究活動もおおむね当初の予定通り順調に進み,研究データに関しては予定以上に得られているため,渡航が可能になった時点ですぐにでも研究成果の発表を積極的に実施し,研究者間での意見交換も実施していきたいと考えている.
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