本研究は,世界的に新規性が高い積層ハイドロゲル電池のさらなる高出力化,力学特性や生体適合性の解明を行い,その後,得られた指標から人工発電器官を有する新型インプラントの設計・開発システムの確立を行うことが目的である.令和4年度は,令和3年度までの研究成果を踏まえつつ,積層ハイドロゲル電池の作製方法の改善,電力特性のさらなる高出力化,ゲルの力学特性の解明を行い,CT画像を利用したFEA(CT-FEA)による骨用インプラントの設計及び試作,骨芽細胞を用いた細胞培養実験を通して,試作した人工発電器官を有する骨用インプラントによる電気的刺激が細胞増殖や細胞外基質形成に及ぼす影響について検討した. 研究計画のもと研究を行った結果,ゲル電池の作製方法を改善したことで電力特性及び形状安定性の向上に成功した.先行研究よりも優れた電力特性が確認できており,生体電池としての有効性が示唆されている.また,ゲル電池に使用されている4種類のゲルに対して圧縮力学試験を行ったところ,厚さ5㎜の試料を4.5㎜まで圧縮しても破断には至らず,非常に良好な柔軟性や限界圧縮応力が示された.生体内に適用した際,力学的環境に対して優れた柔軟性を発揮し,破損する可能性も低いと考えられる.そして,骨構造解析ソフトウェアを用いて,骨用インプラントの設計や生体電池としてのゲル電池の適用方法について検討を行った.さらに3Dプリンタを用いて骨用インプラントを試作し,力学試験による力学特性の評価を行い,最後に骨芽細胞を用いた培養実験を実施し,電気的刺激が細胞増殖能に及ぼす影響について検討した. 上記のようにおおむね順調に研究活動を遂行できており,研究対象である積層ハイドロゲル電池の幅広い有効性が示されていると考える.令和5年度以降も引き続き研究活動を遂行しながら新型インプラントの設計・開発システムの確立を行う予定である.
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