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2020 年度 実施状況報告書

脳・脊椎統合運動回路モデルの作製とALS発症メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K20178
研究機関東京大学

研究代表者

大崎 達哉  東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (20809230)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードALS / マイクロデバイス / 神経変性疾患
研究実績の概要

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経細胞が細胞死を引き起こすことにより、全身の筋肉が動かなくなる神経変性疾患である。日本では、1974年に難治性疾患の特定疾患に認定され、原因究明に向けて動物実験などの研究が行われてきた。その結果、様々な遺伝子変異と発症の関連性について明らかになりつつあるが、ALSの発症メカニズムは解明されておらず、根本的な治療方法は未だ存在しない。近年、ヒトの体から採取した運動ニューロンや骨格筋細胞をシャーレ上で培養する、2次元in vitro毒性試験法が確立しつつある。この手法は、モデル動物からヒトの単一細胞へと評価対象を移すことで、生命現象をある程度把握することを可能にした。しかし、生体の構造は複雑で、単一細胞の挙動は本来の生命現象とは大きく異なるという問題がある。特に、運動神経、感覚神経、骨格筋細胞などの様々な細胞が複雑に絡み合う「脳・脊椎運動回路」の実現のためには、従来の2次元の培養系では、正確に生体内の動態を再現することは不可能である。このことが、これまでの創薬を困難なものにしてきた。本研究の目的は、運動に関わる組織、具体的には、運動と感覚神経回路、筋肉組織、更にはシュワン細胞からなる「3D脳・脊椎統合運動回路モデル」を生体外で作製し、ALS病理のメカニズムの一端を解明することである

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請者はこれまで、マイクロデバイス内にiPS細胞から誘導した運動神経細胞と骨格筋細胞を共培養することにより、生体外で3次元的な運動ユニットを作製してきた。この運動ユニットは、運動を構成する最小単位であり、生体外で、光刺激により神経細胞を通して筋肉が収縮するという一連の動作を再現可能にするモデルであった。マイクロデバイス上で3次元的に培養する利点は、実際に筋収縮力を‘収縮力’というパラメーターで測定できることにある。しかし一方で、作製した運動ユニットは、病理を再現する上で十分とは言えない。なぜなら、これまで作製した組織には、感覚神経がないためである。感覚神経は、筋肉や脊椎反射をコントロールする上で非常に重要なフィードバックシステムを司っており、完全な運動ユニットを作製するためには必要不可欠な器官である。今年度、申請者は、2次元平面上でiPS細胞から感覚神経細胞を分化誘導する手法の確立した。また、確立した分化誘導のプロトコルを三次元の組織体、オルガノイドへと応用し、感覚神経オルガノイドを作製する手法を確立した。更に、これまで作製してきた運動神経オルガノイドと、本年度確立した、感覚神経オルガノイドの共培養実験を行い、二つの組織を同一デバイス内で長期的に培養できることを証明した。

今後の研究の推進方策

今後は、3次元的に感覚神経、運動神経、そして、骨格筋細胞を共培養可能な新規マイクロデバイスを開発し、感覚器を有した運動ユニットを作製する。また、脳組織については、近年、脳オルガノイドと呼ばれる自己組織的に誘発される組織体の研究が盛んに行われ、脳に似た神経活動の発火と振動も観察することが可能になってきている。これらの知見と作製手法を取り入れることにより、脳オルガノイドと脊椎―骨格筋組織をつなげ、ALS患者由来のiPS細胞から脳オルガノイドを作製しそれを健常者脳オルガノイドと比較することにより、中枢での病理的な役割と、それらの機能不全が最終的に筋委縮にどのように影響を与えるのかを明らかにする。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] Complex Activity and Short-term Memories in Reciprocally Connected Cerebral Organoids2021

    • 著者名/発表者名
      Osaki Tatsuya、Ikeuchi Yoshiho
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1101/2021.02.16.431387

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] On-chip 3D neuromuscular model for drug screening and precision medicine in neuromuscular disease2020

    • 著者名/発表者名
      Osaki Tatsuya、Uzel Sebastien G. M.、Kamm Roger D.
    • 雑誌名

      Nature Protocols

      巻: 15 ページ: 421~449

    • DOI

      10.1038/s41596-019-0248-1

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Modeling Nanocarrier Transport across a 3D In Vitro Human Blood‐Brain?Barrier Microvasculature2020

    • 著者名/発表者名
      Lee Sharon Wei Ling、Campisi Marco、Osaki Tatsuya、Possenti Luca、Mattu Clara、Adriani Giulia、Kamm Roger Dale、Chiono Valeria
    • 雑誌名

      Advanced Healthcare Materials

      巻: 9 ページ: 1901486~1901486

    • DOI

      10.1002/adhm.201901486

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] A widespread family of heat-resistant obscure (Hero) proteins protect against protein instability and aggregation2020

    • 著者名/発表者名
      Kotaro Tsuboyama, Tatsuya Osaki, Eriko Matsuura-Suzuki, Hiroko Kozuka-Hata, Yuki Okada, Masaaki Oyama, Yoshiho Ikeuchi, Shintaro Iwasaki, Yukihide Tomari
    • 雑誌名

      PLoS biology

      巻: 18 ページ: -

    • DOI

      10.1371/journal.pbio.30006

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Tumor-Derived cGAMP Regulates Activation of the Vasculature2020

    • 著者名/発表者名
      Campisi Marco, Sundararaman Shriram K.、Shelton Sarah E., Ryohei,Tani Tetsuo、Ivanova Elena, Osaki Tatsuya, Lee Sharon Wei Ling, Thai Tran, Han Saemi、Piel Brandon P., Gilhooley Sean, Paweletz Cloud P.,Chiono Valeria、Kamm Roger D., Kitajima Shunsuke、Barbie David A.
    • 雑誌名

      Frontiers in Immunology

      巻: 11 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fimmu.2020.02090

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Three-Dimensional Motor Nerve Organoid Generation2020

    • 著者名/発表者名
      Osaki Tatsuya、Chow Siu Yu A.、Nakanishi Yui、Hern?ndez Joel、Kawada Jiro、Fujii Teruo、Ikeuchi Yoshiho
    • 雑誌名

      Journal of Visualized Experiments

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.3791/61544

    • 査読あり

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公開日: 2021-12-27  

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