研究課題/領域番号 |
20K20179
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
伊藤 栄紘 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (70707918)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脂肪細胞 / 活性酸素種 / 酸素濃度イメージング / ポルフィリン |
研究実績の概要 |
本申請研究では、脂肪分解における細胞内酸素濃度変化、活性酸素種(ROS)刺激の影響と抗酸化剤による脂肪分解機能回復の観察から、脂肪細胞の酸素とROS動態を解明することを目指す。既存の報告とこれまでの研究成果から、脂肪分解には適切なROS濃度が存在することが考えられるが、細胞レベルでの酸素動態や脂肪分解に関与するROSの種類や濃度の影響を詳細に検討した報告はない。 令和2年度は、酸素濃度イメージング時に発生する一重項酸素が細胞へ影響を与えない、新たに開発したPtP修飾メソポーラスシリカナノ粒子(PtP@MSN)を用いて、脂肪細胞内の酸素濃度イメージングと脂肪分解を評価した。マウス線維芽細胞3T3-L1を既定のプロトコルで分化誘導して調製した脂肪細胞にPtP@MSNを取り込ませて酸素濃度イメージングを行った。気相の酸素濃度に応じて取込まれたPtP@MSNのリン光寿命も従来の色素と同様に変化した。また、ROS検出蛍光色素を用いて酸素濃度イメージング後の細胞内のROS量を観察したところ、PtP@MSNの場合はほとんど検出されなかった。さらに、PtP@MSNと脂肪滴蛍光色素LipiDyeで二重染色した細胞を用いて酸素濃度イメージングと脂肪滴イメージングの同時観察を行った。その結果、脂肪分解促進剤を添加しても従来の白金ポルフィリンでは阻害されていた脂肪分解が、PtP@MSNの場合は経時的に脂肪滴が消失した。従って、PtP@MSNにより細胞へのROSの影響を抑制した酸素濃度イメージングが達成され、脂肪細胞の研究に有効であることが示された。 令和3年度は、PtP@MSNと従来の白金ポルフィリンを用いて、脂肪細胞へROS刺激を与えた時の細胞内酸素濃度と脂肪滴変化を観察し、酸素代謝と脂肪分解におけるROSの影響を調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、新規酸素センシングプローブであるPtP修飾メソポーラスシリカナノ粒子(PtP@MSN)を用いて、脂肪細胞内の酸素濃度イメージングを達成した。さらに、脂肪滴蛍光色素LipiDyeによる観察結果から、従来の白金ポルフィリンでは阻害されていた脂肪分解が、PtP@MSNでは回復することを明らかにした。従って、PtP@MSNを用いることで脂肪細胞の脂肪滴と酸素濃度の同時イメージングを達成できることが確認されたため、当初の予定通り研究計画が進行していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は当初の研究計画に従い、脂肪細胞へROS刺激を与えた時の細胞内酸素濃度と脂肪滴変化を観察し、酸素代謝と脂肪分解におけるROSの影響を調べる予定である。脂肪細胞へのROS刺激には、先行実験で用いた水溶性PtPによる一重項酸素発生反応を利用して、細胞に水溶性PtPとPtP@MSNを同時に取り込ませ、所定時間の細胞内酸素濃度イメージングを試みる。
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