細胞遊走は、恒常性の維持、様々な生理機能の発現,組織・器官の発生において基礎をなす機能である。細胞は基材の弾性率の違いを感知し、接着した基材表面に弾性率勾配がある場合、硬い領域に遊走することが知られている。この運動はがん細胞などで観察されている。それに対し細胞は凹凸構造が存在する場合においてそれに応答して遊走することが観察された。さらにこの指向性運動は硬い領域への指向性運動とは独立している可能性が示唆されている。本研究は弾性率と微細凹凸構造の独立制御を可能とする細胞培養ハイドロゲルを開発し、表面微細凹凸構造への細胞遊走挙動メカニズムを明らかにしうるものである。 前年度までにゼラチンゲルへの表面追加架橋によってゲル表面に微細凹凸構造を導入した。化学架橋ゼラチンゲルに対して、ゲル化後に表面に架橋剤を更に添加することによって、表面バルク間で弾性率勾配が発生し膨潤時に表面が座屈する。本年度は得られたゲルに細胞を接着させ郵送挙動の時間変化を確認した。微細凹凸構造指向性運動の有無をタイムラプス撮影で調べるとともに、微細凹凸構造によって誘起される軟領域に対する遊走を観察した。表面の微細凹凸構造が細胞よりも大きい場合は遊走が抑制され、特定の微細凹凸構造の場合で遊走が促進されることが確認された。細胞の遊走について新たなメカニズムが提案されることは、細胞バイオメカニクス領域の発展に貢献できると考えられる。
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