研究課題/領域番号 |
20K20188
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
榎本 彩乃 長崎国際大学, 薬学部, 講師 (30826186)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オーバーハウザー効果MRI / フリーラジカル / 悪性黒色腫 |
研究実績の概要 |
本研究では、オーバーハウザー効果MRI(OMRI)を用いて、悪性黒色腫(メラノーマ)の腫瘍中に含まれるメラニンラジカルを非侵襲的に、かつ高解像度で可視化し、腫瘍深達度の定量的評価を行う手法を新規に構築することを目的としている。 本年度は、皮膚表面を対象とした高感度な共振器の開発を目的として、1)EPR励起用開口端型空洞共振器の開発および最適化、2)MRI撮像用のサーフェイスコイル共振器の開発、3)試料を用いた深さ方向の解像度評価を行う予定であった。 1)、2)に関しては現在も開発は継続中であり、シミュレーションを用いながら設計を進めている。3)に関しては次年度以降生体試料を用いて行う予定である。また、上記に加え当初予定していた0.15T用の空洞共振器に加え、悪性黒色腫の生体内での広がりの状態や性質について画像と併用しての調査を行うため、電磁波侵入深さが深い10mTで、かつ測定範囲に最適化したサイズでのOMRI用のサーフェイスコイル型共振器も作製し、悪性黒色腫の画像化が可能であることを確認した。 また、次年度に関係する悪性黒色腫の腫瘍中に含まれるメラニンラジカル量の推定を行うため、より高感度なX-Band EPR装置を用い、メラニンラジカルを含む試薬を用いてメラニンラジカル量と信号強度の関係を調べ、検量線を作成した。さらに、メラノーマ細胞、及びメラノーマ細胞移植マウスから摘出した腫瘍を用いて、一定量の細胞及び腫瘍に含まれるメラニンラジカルの量の定量化が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は共振器開発及びその高感度化、最適化を完了する予定であったが、シミュレーション・試作に時間を要しており、また、並行して行った次年度の予備実験の結果から、生体試料中に含まれるメラニンラジカル量を想定するに、さらなる高感度化が必要であるとわかった。そのため、当初の計画よりやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本年度完了しなかった空洞共振器の開発を完成、かつ必要に応じて改良しながら、当初通りi)OMRI計測による評価と実際の評価との比較、ii)異なるステージでのin vivo計測について研究を行う。i)については、腫瘍の深さの評価をOMRIで行い、組織学的検査との結果と比較する。またii)についてはi)で行った評価を様々なステージで行い、腫瘍深達度評価がOMRIによって可能であることを示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
0.15TOMRIシステムを構成する際に、従来よりも大電力出力可能なNMR用パワーアンプが必要となった。通常のNMRとは要件が異なるため、受注生産であり、納期の関係から納品が年度を跨ぐこと、また、当該年度に交付された助成金の額では予算が不足していたため、次年度への繰り越しをすることで次年度払いとした。
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