研究課題/領域番号 |
20K20201
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西村 慎之介 九州大学, 先導物質化学研究所, 特別研究員(PD) (60851475)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ペプチドリガンド / ドラッグデリバリーシステム / DDS / がん細胞選択性 / 細胞取り込み / pH応答性 |
研究実績の概要 |
抗がん剤は正常細胞をも侵襲するため、副作用が大きな問題となっている。そのため、標的部位のみに薬物を輸送可能なドラッグデリバリーシステム (DDS) の構築が必要である。従来の能動的ターゲティング型DDSキャリアーでは、がん細胞へ効率的に薬物を送達できるものの正常細胞も認識するという問題がある。本課題は、がん細胞選択的な取り込みを示すスマートDDSキャリアーを提案するものである。 本年度は、 微少なpH変化に応答し、がん細胞認識のoffーonスイッチ可能なスマートペプチドの設計と合成を行った。10種類以上のペプチド配列を検討し、pH 7.0から6.0の間で劇的な二次構造変化を示すアルギニンーグリシンーアスパラギン酸 (RGD) 配列を含むペプチドの開発に成功した。円偏光二色性、蛍光およびNMR分光法を測定による詳細な解析の結果、主たる二次構造としてβシート構造を形成しており、希薄条件にいおいては高次モチーフであるβヘアピン構造を形成していることが明らかとなった。酸性条件下でこのペプチドのRGD部位は、天然の細胞接着性タンパク質であるフィブロネクチン中のRGD部位に類似した歪みを持っているものと考えられる。このペプチドを細胞に投与したところ、pH 7.4 (中性条件) と比較して pH 6.5 (弱酸性条件) のときに劇的に取り込み量が増加することがフローサイトメトリーを用いた分析より明らかとなった。この結果は、本課題にて設計・合成した新規ペプチドが新たなスマートペプチドリガンドとして機能することを示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は微小なpH変化に応答して細胞取り込み能が劇的に向上するスマートペプチドリガンドの開発とその特性評価に成功した。これまでにないコンセプトに基づく機能発現機構であり、次年度に益々の進捗が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
ポリマーとのハイブリッド化を可能とするペプチド連鎖移動剤の合成を1年目に確立した方法で行っていく予定である。次いでペプチドとポリマーのハイブリッド化を可逆的付加ー開裂連鎖移動重合法により行い、得られたハイブリッドポリマーの細胞特性評価を詳細に行う。
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