2022年度は今後細胞移植への実験で用いる予定であるHeLa細胞に適した細胞接着ペプチドの構造活性相関研究、および三次元培養実験を行った。昨年度に同定したインテグリンαvβ5に結合するRGDVF配列の構造活性相関により、HeLa細胞を効率的に接着させることができる細胞接着ペプチド配列として、RGDTFIを同定した。この内容についての論文はACS Omega誌に掲載された。また、昨年度にオクタアルギニンR8(RRRRRRRR)が細胞接着ペプチドとして有用であり、ヘパラン硫酸プロテオグリカンやインテグリンβ1に結合することを見出した。2022年度にはこのR8の構造活性相関研究を行い、そのアルギニンの半分を他のアミノ酸に置換するとそのアミノ酸の性質に依存して生物活性が変化することを明らかにした。その中でも、チロシンを半分含んだYR8(YRYRYRYR)配列がR8と同様にヘパラン硫酸プロテオグリカンやインテグリンβ1に結合し、R8を上回る細胞増殖活性を示すことが明らかとなった。YR8は細胞接着因子として今後の三次元培養や細胞移植への応用が期待される。これについての論文はBiological and Pharmaceutical Bulletinに掲載された。2022年度はさらに、ペプチド-アガロースゲルを用いたHeLa細胞の三次元培養実験も行った。RGDTFIをアガロースゲルに修飾しHeLa細胞を三次元培養することにより、細胞増殖が促進するデータが得られている。今後はYR8も含む他のペプチドも用いつつ、HeLa細胞の三次元培養を進め、マウスを用いた動物実験へと移行していきたい。
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