本研究では、毛包を有する培養皮膚モデルを開発することを目的としている。2年間の研究期間内に、細胞の自己組織化を利用した培養皮膚モデルの作製方法を開発し、毛包に対する薬剤応答性を評価できるか解析を行った。 毛包の前駆細胞である上皮系細胞と間葉系細胞を混合し、セルカルチャーインサートで2週間の培養を行った。この際、低濃度のECMを培地に混合することで、細胞の自己組織化の挙動が大きく変化し、毛包様組織を含む皮膚構造が自発的に形成されることが明らかとなった。毛髪再生能が再生した皮膚構造は、毛包様組織のほかに、基底細胞を含む表皮層、ECMを含む真皮層を有していた。また、混合するECMの濃度や播種細胞数を最適化することで、400本/cm2の密度で毛髪を再生することが可能となった。この組織が発毛阻害因子に応答することも確認しており、毛髪に対する薬剤応答を評価するモデルとして利用できる可能性が示された。一方で、我々が開発した培養皮膚モデルでは、毛包が表皮を貫通し、毛周期を繰り返す様子までは観察されていない。今後、気液界面培養や培地の添加因子の最適化を行うことで毛周期まで繰り返す皮膚モデルの構築を目指していきたい。
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