研究課題/領域番号 |
20K20210
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
TON・THAT LOI 東北大学, 工学研究科, 助教 (90844499)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁気ハイパーサーミア / ハイブリッド金@酸化鉄ナノ粒子 / 金ナノ粒子 / 定温加熱制御 / PID制御 |
研究実績の概要 |
これまで研究開発してきた磁気温熱治療システムの実用化に向けて、各構成要素の高度化を図ってきた。その一環として、2021年度前半では高機能磁性微粒子発熱体として医用認可されている磁性微粒子Resovistを濃縮することにより、発熱効率を従来比4倍向上する事が出来た。また、磁性流体(磁性粒子+溶媒)の自動加熱制御に、高度な温度制御方法の適用(Ziegler-Nicholsステップ応答法)により磁性流体の発熱特性をモデリングし、制御性に優れたPIDパラメータを用いることができた。その結果、マウスを用いた動物実験にて、生体内での定温加熱制御に応用し、定常状態での温度の標準偏差が0.05℃という高精度な温度制御を確立した。 2021年度後半においては、micro-CT/X線によるがんのイメージングと磁気温熱療法によるがん治療を組み合わせた「がん診断・治療装置」に欠かせない良好な光学特性および磁気特性の両方を併せ持つハイブリッド金@酸化鉄ナノ粒子の開発を試みた。金ナノ粒子は、化学処理を行い親和性を高め、親水化処理をした酸化鉄磁性ナノ粒子に静電相互作用で結合させることにより、酸化鉄磁性ナノ粒子の表面に金ナノ粒子を結合させる事ができた。さらに、この磁性ナノ粒子に直接抗体抗原反応により大腸内のビフィズス菌を吸着させることにより、その場所を光学的に高感度で検出する事もできた。 また、科研費による支援で得られた研究成果は、招待講演等で国内外の学会で発表し、査読付き論文も学会誌に採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Resovistは、加熱を目的とした磁性微粒子ではなかったが、濃縮技術を確立する事により我々の磁気温熱治療システムで利用する事ができるようになった。医療認可を受けている素材で、動物実験にもリスクを最小限にして使用可能なので、温度変位0.05°という、従来にない結果を得ることができた。また、磁性ナノ粒子の合成は、狙った様々な粒径(3nm~30nm)の物を自前で自由に合成できるようになったので、磁気温熱治療システムに適用するために、さらなる高機能化を目指した。その高機能化として、ハイブリッド金@酸化鉄ナノ粒子合成の合成にチャレンジし、成功した。それに加え、従来タンパク質を表面にコーティングしてから抗原抗体反応を行っていたものを、磁性ナノ粒子の表面に直接抗体を吸着させる新しい方法で大腸内のビフィズス菌を吸着させ、光学的に高感度で検出することに成功した。さらに、がん診断・治療を目指して、良好な光学特性および磁気特性の両方を併せ持つハイブリッド金@酸化鉄ナノ粒子を開発できた。これらを勘案し、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新規に開発した高機能磁性微粒子を本治療システムに用いることで、生体内の細やかな温度制御を行い、発熱体のさらなる最適化や動物実験を通して治療プロトコル(治療回数や加熱時間、治療温度等)の基礎検討を進める予定である。また、さらに進展すれば、治療に適するナノオーダーの感温磁性体の研究開発も試みる予定である。
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