本年度は、がん診断・治療技術を可能とするナノセラノスティクス剤(Fe3O4@Auナノ粒子)を新たに研究開発した。発熱特性をより高める目的で、異なるサイズのFe3O4ナノ粒子の酸化鉄/金複合ナノ粒子を合成した。Fe3O4粒子は、熱分解法により合成し、粒径が約5nm、10nm、および13nmの3種類を作製した。それを190℃に維持し、酢酸金を還元することにより、Fe3O4粒子の表面に金を堆積させることに成功した。Fe3O4粒子サイズが大きくなるにつれ、磁化の大きさや加熱効率(SAR)が増加することも検証できた。Fe3O4の粒径が約13nmで74.7emu/gの磁化の大きさであり、5nm(52.4emu/g)の物に比較し約1.4倍になった。また、267kHz、25.7kA/mの励磁の下で発熱効率を調べると、最大136.7W/g(Fe3O4)および23.4W/g(Fe3O4@Au)と高い値が得られた。これは、粒径5nmに比べ2倍以上高い値となり、粒径が大きいほどSARが高いことが検証できた。また、CT造影剤として高いコントラスト(CT値851HU)を示した。これらの成果により、磁気ハイパーサーミアへの応用において、より優れた特性のナノセラノスティクス剤を得ることができた。 当初の計画とは別に、強磁性共鳴(FMR)効果に基づいたFe3O4@Auナノ粒子の超高速温度上昇率も実験的に求めた。Fe3O4@Au粒子とそれらのコーティング前のFe3O4粒子の共振周波数は数GHzであり、Kittelの式で良好なフィッティングできた。初期温度上昇率は、FMR条件の対応するDC磁場で最大値に達した(4GHz、4OeのRF磁場ではDC磁場1200Oe、Fe3O4@Au、Fe3O4粒子では1.3、3.9K/s)。これは、従来の磁気ハイパーサーミアのNeel-Brownian緩和の値よりも2桁高かった。
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