研究課題/領域番号 |
20K20211
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野上 光博 東北大学, 工学研究科, 助手 (10847304)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射線計測 / SPECT / 重元素半導体検出器 / 臭化タリウム(TlBr) / 超高分解能サブミリSPECT |
研究実績の概要 |
本研究では、SPECTの空間分解能の向上・改善を検出器開発の観点から行なっている。 SPECTは臓器の生理学的な機能に関する情報を画像から判断することができるが、現状のSPECTは空間分解能が1 cm程度と低いことが最大の欠点となっている。SPECTの空間分解能を改善するためには高い固有分解能を有する新しい検出器の開発が必須である。そこで本研究の目的をガンマ線に高効率で硬い重元素から構成される半導体(本研究ではTlBr化合物半導体に着目した)を用いた検出器を開発し、SPECTの空間分解能を飛躍的に高め、三大成人病(がん、心疾患、脳血管疾患)の早期発見・治療に寄与することとした。 今年度は、SPECTへの応用を念頭において、高い空間分解能を実現するためのTlBr半導体検出器の製作技術に関する検討を行った。半導体検出器で高い空間分解能を実現するためには電極構造が重要となる。そのため初めに、半導体検出器の電極構造について検討を行い、異なる大きさの電極(3×3ピクセル)が作成可能な4種類の蒸着用マスクを設計し、製作した。そのマスクを用いて、TlBr半導体検出器の製作を行った。TlBr半導体検出器を 結晶育成から検出器製作まで通して行うことにより、3 × 3ピクセルを有するTlBr半導体検出器の製作方法を確立した。また、高い空間分解能を実現するためには、TlBr半導体検出器のピクセル電極からの信号の処理技術も重要となる。隣り合うピクセル電極から信号値の大きさを比較することにより、ピクセル電極のサイズ以上の空間分解能が実現可能であることが、CdZnTe半導体検出器では実現されている。この方法をTlBr半導体検出器にも応用するための信号処理技術に関する検討も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、3 × 3ピクセルを有するTlBr半導体検出器の製作方法を確立することに成功した。また、3 × 3ピクセルTlBr半導体検出器からの信号の処理技術の検討も行った。これらの成果は、超高分解能サブミリSPECTを構成するための検出器実現に大きく貢献するものである。これらの理由により、本研究はおおむね順調に進展していると結論付けた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は超高分解能サブミリSPECTを実現する重元素半導体検出器の開発の実現のために下記に示す2つの研究課題に取り組む予定である。 (1)本年度に検討した信号処理技術を実装し、電極サイズ以上の空間分解能を実現する。 (2)本研究で開発した3 × 3ピクセルを有するTlBr半導体検出器および、信号処理プログラムを組み合わせたシステムを構築し、その評価を行う。
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