SPECTは臓器の生理学的な機能に関する情報を画像から判断することができるが、現状のSPECTは空間分解能が1 cm程度と低いことが最大の欠点となっている。SPECTの空間分解能を改善するためには高い固有分解能を有する新しい検出器の開発が必須である。そこで本研究では、ガンマ線に高効率で硬い重元素から構成される半導体(本研究ではTlBr化合物半導体に着目した)を用いた検出器の開発に取り組んだ。 今年度は、1つのアノードピクセル電極とそれを囲むガード電極およびカソード電極を有するTlBrピクセル型半導体検出器の信号処理技術について研究開発を行った。TlBrピクセル型半導体検出器のアノードピクセル電極とガード電極の信号波高値比を用いることにより、アノードピクセル電極サイズ以上の相互作用位置決定を行った。また、アノードピクセル電極とカソード電極の信号波高値比から検出器内の深さ方向の相互作用位置決定を行った。 本研究の信号処理方法を評価するために、TlBrピクセル型半導体検出器のカソード面から137Csの662 keVのガンマ線を照射した。信号処理を行わないアノードスペクトルは662 keVのガンマ線に対して3.0 % FWHMのエネルギー分解能を示した。カソード・アノード信号比を用いて相互作用深さ決定を行い、カソード近傍で相互作用したイベントのみを取り出して構成したアノードスペクトルは1.8 % FWHM(@662 keV)のエネルギー分解能を示した。加えて、アノード・ガード信号比を用いることで、カソード近傍かつ、アノードピクセルの中心領域で相互作用したイベントのみを取り出すことにより、1.2 % FWHM(@662 keV)と高いエネルギー分解能が得られた。この結果は本研究の信号処理方法により、TlBrピクセル型半導体検出器のピクセル電極サイズ以上の相互作用位置決定が実現できることを示している。 本研究の成果は、SPECT用のガンマ線半導体検出器の固有分解能向上に貢献するものである。
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