研究課題/領域番号 |
20K20216
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
杉野 貴明 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (30830492)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | セグメンテーション / 医用画像処理 / 人工知能 |
研究実績の概要 |
人工知能(AI)技術による医用画像セグメンテーションの汎用性を高めるためには,教師データの量と質の確保,医用画像データの不統一性,画像処理過程のブラックボックス化が課題となる.これらの課題を解決してAIセグメンテーションの汎用性を高めることを目的とし,2020年度は主に,教師データの拡張・クレンジング技術の開発を行った.また,医用画像データの拡張(多種化)技術の開発に向け,ある医用画像データを他の種類の医用画像データに近似して変換する技術の検討を行った.さらに,学習過程分析に基づくAIの最適化技術の開発に向け,AIの学習過程の可視化・分析に関する検討も行った.以下に各研究項目についての実績を述べる. (1)教師データの拡張・クレンジング技術の開発:AI技術を教師データ(ラベル画像)の再構築に活用することで,データ量が不十分かつ低品質なラベル画像の拡張およびクレンジング手法を開発した.ここでは,3D医用画像の一部の画像スライスのみがラベリングされ,またラベルの輪郭にバラつきを含む不完全なラベル画像から完全なラベル画像を高精度で生成する技術を実現した. (2)医用画像データの拡張(多種化)技術の開発:AI技術の一つであるGenerative Adversarial Networkの活用により,医用画像データの拡張を図る技術について検討した.ここでは,異なる撮像方式で得られたMRI画像間での変換を行う手法について検討した. (3)学習過程分析に基づくAIの最適化技術の開発:AIの画像処理過程で得られる特徴マップを可視化することで学習過程を分析する手法について検討した.これにより,AIのネットワーク構造や学習設定条件に応じた特徴マップの変化を可視化し,セグメンテーションの性能に寄与する要素の洗い出しを行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画として定めた以下の各研究項目についての達成度を述べる. (1)教師データの拡張・クレンジング技術の開発:欠損およびノイズを含む不完全な教師データを補間・補正して完全な教師データとして再構築する手法について開発した.MRI画像からの脳構造セグメンテーションを対象として本手法の性能を評価し,有用性を示した. (2)医用画像データの拡張(多種化)技術の開発:学習データの拡張のために多種類の医用画像間変換技術の検討として,Generative Adversarial Networkを活用した画像変換技術に関する調査と初期実装を行った. (3)学習過程分析に基づくAIの最適化技術の開発:AIセグメンテーションにおける学習過程分析に関する検討として,AIの画像処理過程で得られる特徴マップの可視化を行い,ネットワーク構造やハイパーパラメータを含むAIの学習条件に応じた特徴マップの変化について調査した. 上記のように,現在までに教師データの拡張・クレンジング技術を開発し,医用画像データの拡張(多種化)技術と学習過程分析技術に関する検討を進めた.したがって,おおむね順調に進展していると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
今後予定している各研究項目について以下に説明する. (1)教師データの拡張・クレンジング技術の開発:他の医用画像セグメンテーションに対する本手法の性能評価を行うとともに,多種類の医用画像セグメンテーション課題における本手法の性能および汎用性の向上を図る. (2)医用画像データの拡張(多種化)技術の開発:引き続き,医用画像データの拡張(多種化)手法について開発する.また,(1)同様,多種類の医用画像セグメンテーション課題における本手法の性能評価・改良を通じ,本手法の性能および汎用性の向上を図る. (3)学習過程分析に基づくAIの最適化技術の開発:引き続き,特徴マップの可視化等を通じた学習過程分析手法の確立を図り,可能であれば(1)および(2)のネットワークの改善に利用することを検討する.
|