人工知能(AI)技術による医用画像セグメンテーションの汎用性の向上を目的とし,2021年度は主に,不完全な教師データならびに多種医用画像に対するAIセグメンテーションの精度・ロバスト性をさらに高める技術の検討を行った.具体的には,多種類のMRI画像(T1強調画像,血管強調画像,T2強調画像)を利用し,脳実質領域,血管領域,あるいは大脳基底核領域などの多種類のセグメンテーションタスクを対象に,以下の研究項目の開発・評価を実施した. (1)教師データの拡張・クレンジング技術の開発:不完全な教師データからのセグメンテーションの性能を高めるAIのSkip connection構造を明らかにし,不完全な教師データからより高精度なセグメンテーションを可能とするネットワーク構造を開発するとともに,データの欠損率に応じた抽出精度について調査し明らかにした. (2)医用画像データの拡張(多種化)技術の開発:Generative Adversarial Networkによる他種医用画像への画像変換を用いたデータ拡張技術を構築し,異なる撮像方式で撮影されたMRI画像への画像変換によるデータ拡張ならびに生成した疑似画像の利用がセグメンテーション精度の向上に効果をもたらすことを明らかにした. (3)学習過程分析に基づくAIの最適化技術の開発:AIの学習過程および性能に影響を与える損失関数,特に損失関数への重み付けに着目し,医用画像セグメンテーションで問題となる抽出対象のサイズの不均衡(クラスインバランス)に対して効果的な損失関数への重み付け手法を比較調査するとともに,セグメンテーション対象に応じた適切な損失関数を明らかにした. 以上の研究成果は,国内外のコンピュータ外科学会で発表され,またMedical Physicsを含む2編の論文誌に投稿および掲載された.
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