本年度は,対照学習とSupport Vector Machine(SVM)を併用した骨髄炎発症範囲推定手法を構築した.構築手法では被験者の術前CT画像から切り取った64x64ピクセルの2次元パッチ画像を用いた対照学習により,画像特徴量抽出用の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルを学習する.次にCNNにより抽出された特徴量からSVMにより骨髄炎の有無を推定する識別モデルを学習する.これらによりパッチごとの骨髄炎の有無が推定できるため,術前CT画像中での骨髄炎発症範囲推定が行える.これらの結果について,第61回日本生体医工学会大会,2022 World Automation Congressで報告した.また,一般的な2クラス分類CNNと,同一のパッチを正例とする対象学習・同一のラベルを持つパッチを正例とする対象学習の2種類の方法について,それぞれパッチのラベル付けを2種類(パッチ内の30%以上が顎骨骨髄炎・パッチ内の1ピクセル以上が顎骨骨髄炎)の合計6パターンで比較した.実験の結果,同一のパッチを正例とし30%以上の顎骨骨髄炎を含むパッチを陽性パッチとして用いた場合に最も高いF値0.734を達成し,2クラス分類CNNのF値0.665を上回る結果が得られた.実験結果から,患者数を十分に確保できない疾患については,対象学習により通常の学習と比較し疾患の識別に有用な画像特徴量が効率よく抽出できることが確認できた.さらに,推定領域の可視化結果からは前年度までの手法で見られた過検出が大幅に減少していることが確認できた.これらの内容について,現在論文投稿準備中である.
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