本研究は、薬物代謝酵素シトクロムP450を用いた新規の診断技術である「P450蛍光阻害アッセイ法」により、神経変性疾患の1種であるアルツハイマー病の診断方法の開発を目指した研究である。シトクロムP450は、疾患の発症によりその発現量が変化することが知られており、この変化によって血中に存在するP450に関連する物質の量や質が変化することが予想される。本アッセイ法は、血中のP450に関連する代謝産物の変化を検出するための新規のリキッドバイオプシー技術である。本研究はこの方法がアルツハイマー病の診断に適応可能であるかどうかを明らかにすることを目的としている。本研究では、数十症例のアルツハイマー病患者血清および、アルツハイマー病モデル動物から取得した血清を用いた診断精度の評価を行う。また、シトクロムP450の活性を阻害する血清中の物質の分離同定を目的とした実験も実施する。 アルツハイマー病患者血清やアルツハイマー病モデルマウスの血清を用いてP450蛍光阻害アッセイを実施した結果、アッセイに使用した複数のシトクロムP450分子種で患者群と健常者との有意な変化が認められた。また、アルツハイマー病以外の疾患に罹患した患者血清を用いて解析を行った結果、アルツハイマー病や健常者とも異なった変化が認められた。以上のことから、本アッセイ法がアルツハイマー病に適応できる可能性があり、同時にほかの疾患とも区別が可能であることがわかった。
|