研究課題/領域番号 |
20K20230
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
堀内 裕紀 順天堂大学, 大学院医学研究科, 准教授 (60867951)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 血液形態検査 / 人工知能(AI) / AI自動血球形態解析 / AI造血器腫瘍診断支援 |
研究実績の概要 |
深層学習技術を用いた人工知能 (AI) は、近年医療画像診断の分野で導入されつつあり、患者数の増加、医療従事者の不足、専門医偏在化が激化する中で、すべての患者により質の高い医療を提供し続けるための強大な支援力として期待されている。臨床検査分野の血液形態検査は、未だ自動化や標準化が確立しておらず、熟練した技術が必要とされ、専門の検査技師や診断医師の不足が問題である。その中で申請者らは、これまでの研究においてAI深層学習技術を用いて末梢血の血液細胞形態の高精度自動分析システムを開発した。 本研究の目的は、高度な判断力を要する血球細胞判別や血液病理診断におけるAI造血器疾患自動診断支援システムの精度を血液病理検査技師や診断医の技術力・診断力に比肩または超越するまで高め、診断の普遍化・標準化・効率化を目指すことである。 本AI自動血球形態解析システムは、『細胞種の判別』(分葉核好中球、リンパ球、芽球など)と、これらそれぞれの細胞に対する形態異常の有無とその種類を示す『異常コメント』により細胞の特徴を示す。 本研究では、1『末梢血でのAI血球形態自動解析』技術の精度の向上、2『骨髄血でのAI血球形態自動解析技術の創出』3『AI造血器腫瘍診断支援』 技術の創出の大きく3フェーズに分けて研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、それまでのAI末梢血自動血球形態解析システムの性能評価として、AIの末梢血球の形態把握や数的情報から骨髄増殖性腫瘍(真性赤血球増加症、骨髄線維症、本態性血小板血症)の鑑別アルゴリズムを構築し、判別能を評価した。判別能はAUC 0.96以上で良好な判別能を得た。 2021年度は大きく2つのAI研究を行た。 I:COVID-19症例の末梢血血球形態をAIで解析し、健常例(非COVID-19)・軽症例・重症例を比較した(論文掲載)。 Ⅱ:AI末梢血血液形態自動解析の開発について、今までは正常細胞の判別能の向上を主におこなってきたが、次は腫瘍細胞、非腫瘍細胞(反応性変化)、グレーゾーン(前癌様病態含む)の細胞の判別能の向上を目指しバージョンアップAI開発中で、その検証を開始。具体的には (1)腫瘍細胞や反応性変化を特徴づける『異常コメント』(例えば、Auer小体あり、核小体あり)の選別と、より正確な感度・特異度をもって示せるように、評価データから閾値の設定を行った。 (2)新たに設定した閾値を使用し、どの程度の感度・特異度で異常細胞を適切な異常コメントで表せるか、当院で末梢血に『芽球』もしくは『その他(判別困難な異常細胞が出現したときに使用する造血細胞分類)』に判別された有核細胞が出現した100検体と、コントロール対象として症例を選ばないルチーン検査200検体の判別能について評価中。評価中に生じてきた問題点を一つ一つ検証・解明している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降は、現時点までで生じてきたAI自動末梢血形態解析の問題点を明確にし解決する。異常細胞につく異常コメントの妥当性も評価し、閾値を再設定する。その後、順天堂医院の標本のみでなく、多施設(京都大学、国立がんセンター)でも同様の検証を行う。標本の作製方法には施設間差があり、開発したAIが自施設のみでなく、国内どの施設の標本でも通用するかを検証する。いずれは骨髄AIの開発へも進む。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19蔓延により、2021年の学会も多くはオンラインになり、学会出張費が不要になった。次年度は、学会が通常開催に戻るようであれば、予定通り学会旅費が必要になる。 今後多施設検証に進み、より多くのデータの蓄積と解析が必要になるため、高額な費用のかかる学習用データを蓄積するためのストレージシステム、AI解析に必要な解析ソフトウエアの準備、複数のパラメーターにより細胞を分析するフローサイト解析とそれに必要なソフトウェア(FCS Express)、多施設でオンライン上で標本の目合わせをするための顕微鏡レンズと携帯電話のカメラをつなげる接続機器などを適宜購入予定である。
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