研究課題/領域番号 |
20K20232
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
村田 一心 国立天文台, ハワイ観測所, 特任研究員 (90770040)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フォトンカウンティングCT / スペクトル歪み補正 / 圧縮センシング / 媒質分離 |
研究実績の概要 |
本研究では、次世代のX線CTとして注目されているスペクトルCTにおける最大の課題であるスペクトル歪みに関する研究を推進している. 今年度は、スペクトルの歪みを補正する機械学習ベースの手法を開発し、国際学会で発表した. スペクトルCTの最大の利点は、スペクトルを取得し、媒質分離を行うことである. 媒質分離を行うことで、被写体の断層画像を媒質ごとに取得でき、複数の造影剤を同時に使用可能にするなど、従来のCTでは不可能であった幅広い応用が期待されている. しかし、特にパルス・パイルアップ効果と呼ばれる現象によりスペクトルが歪められてしまうと、媒質分離の精度は著しく劣化してしまう. そのため、その補正方法は近年、特に重要視されている. そこで本研究では、パルス・パイルアップ効果によるスペクトルの歪みをシミュレーションで再現し、機械学習ベースの手法で歪みを補正した. スペクトルの歪みを補正するかどうかで、スペクトルCTの最大の特徴である「媒質分離」の精度が劇的に向上することがわかった. その際、ネットワークの学習時における損失関数を最適化することで、補正精度を向上できることも示した. 圧縮センシングを用いた手法については、プロトタイプを開発し、現在評価中である. 一般的には、スペクトルの歪み補正を行うと、その副作用により雑音が増幅されてしまう. しかし、圧縮センシングを用いた方法では、その雑音の増幅を抑えつつ、歪みを補正できると期待される. 本研究では、近年得に注目されている「全変動正則化」「テンソル分解による低ランク近似」を用いた手法を開発し、一定の精度が得られることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大防止策に伴い、対面での議論がほとんどできなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
元々の目的である、圧縮センシングを用いたスペクトル歪み補正方法を開発・評価する. プロトタイプはすでに開発し、評価も進んでいる. 今後は特に、近年注目されている「テンソル分解を用いた低ランク近似」の応用とその有効性を検証する. 今年度は国内・国際会議に会場で出席し、多くの研究者と議論する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、国際会議がオンライン開催となったため. 今年度は国内外の研究会に参加し、海外の研究者と活発な議論を行う.
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