研究課題/領域番号 |
20K20238
|
研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
鈴木 順 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (00639255)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | カプセル内視鏡 / 酸化亜鉛 / 圧電材料 / ナノワイヤー / アクチュエータ / 画像認識 |
研究実績の概要 |
本研究では単一の酸化亜鉛(ZnO)材料を用いて生物内の悪環境下でも能動的に移動できるカプセル内視鏡を研究開発すること,発光素子,受光素子を製作し,アクチュエータと同期させた撮像システムを構築することを目的とした.本研究で遂行する項目に対する具体的なビジョンと実施計画と研究実績について以下に示す. 1.最適なアクチュエータの機構と材料パラメータの最適化(線虫型,バルーン型等): ZnOの基礎的な材料特性を把握した上で,膜の応力等の機械的特性,静電容量,電気特性を評価する評価サンプルを製作し,アクチュエータ,発光素子,受光素子に関するパラメータの抽出を行う.2021年度には胃腸に留められるアクチュエータの機構についてバルーンを用いた試作品を作製し,胃腸モデルとの摩擦力の評価を行い,次期試作につながる知見を得た.また,アクチュエータの制御方法について別途検討した.アクチュエータの動力源の開発は圧電素子を構成するZnO材料を高速成膜する手法を検討し,高速成膜と膜のクラックを抑えられる成膜条件があることがわかった. 2.画素サイズと画素数の最適化:発光素子に関しては,ZnO薄膜発光ダイオードやナノワイヤーを用いて,その電圧の印加方法や発光強度等の測定手法について検討し特性評価する.受光素子については画素サイズを変えながら画素サイズと受光感度の関係を確認し,画素サイズを小さくしていく.最終的には,アクチュエータの動作角度と特性評価で得られた受光感度の情報を基に視野角や空間分解能を考慮した画素サイズや画素数についてパラメータを最適化する.また,画像処理方法に関してのシステム最適化を行う.2021年度は発受光素子の材料となるZnOナノワイヤー作製装置を立ち上げることができた.また,画像認識システムの最適化では教師画像の作製方法を変えることで胃腸モデルの腫瘍検出率を向上させることができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カプセル内視鏡用のアクチュエータの機構について検討し,胃や腸の消化管で留まることができるバルーンを用いたアクチュエータの開発に着手した.バルーンの作製では形状の自由度を上げるためにポリエチレン材料をレーザーカッタで加工し,溶着によって封止を行った.また,その摩擦力の評価として大腸モデルとフォースゲージを用いた評価系を構築し,モデルとバルーン間の摩擦力の評価を行えるようにした.また,アクチュエータの動力源の開発では圧電材料のZnOについて基板への印加バイアスとプロセス圧力を変えて成膜し,成膜速度の高速化と成膜後のクラックを抑える試みを行った.その結果,成膜速度を速くしながらクラックを抑えられる条件についての傾向を見出した.今後は更なるクラック防止策の検討と素子構造のプロセスを進めていく予定である. 発光素子,受光素子の作製に関してZnOナノワイヤー生成装置の立ち上げを行い,プラスチック基板上へ生成物が付着するところまで進めることができた.画像認識に関するシステムの最適化についてはOpenCVを用いた画像認識の機械学習においてライティング等,教師画像の種類を変えながら腫瘍の有無の判定を行い,最適条件を検討した.その結果,まだ判定の精度は劣るがリアルタイムで大腸モデル内の直径5 mm大の腫瘍を検出するプログラムの作成までに至った. 以上のことから,画像認識についての結果はある程度の成果が得られているが素子作製のプロセスに関して素子構造を作製するまでを予定していたが達成しなかったため,達成度に関しては「やや遅れている」との判断をした.
|
今後の研究の推進方策 |
1.最適なアクチュエータの機構と材料パラメータの最適化(線虫型,バルーン型等): 2022年度はアクチュエータの機構については原理試作機の評価を継続するとともに,その課題点を抽出し,2次試作について検討する.小型化については実際の素子構造を作製して電気的特性と機械的特性の特性評価を行う. 2.画素サイズと画素数の最適化: 発光素子に関しては,ZnO薄膜発光ダイオードやナノワイヤーを用いて,その電圧の印加方法や発光強度等の測定手法について検討し特性評価する.受光素子については画素サイズを変えながら画素サイズと受光感度の関係を確認し,画素サイズを小さくしていく.最終的には,アクチュエータの動作角度と特性評価で得られた受光感度の情報を基に視野角や空間分解能を考慮した画素サイズや画素数についてパラメータを最適化する.また,画像処理方法に関してのシステム最適化を行う. 2022年度は薄膜発光ダイオード,受光素子の作製についてZnOナノワイヤーのプロセスを進め,デバイス構造を検討した上で電気的特性評価を行う.画像処理方法のシステム最適化に関しては既存の画像解析ソフトで少ない教師画像の枚数で高精度に腫瘍を検出できる方法について教師画像の撮影方法や増殖方法を再検討し,画素サイズや画素数を含めた検討をしていく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由と使用計画 今年度使用予定であった学会発表等の旅費について新型コロナウイルスの影響でオンラインになってしまった点や物品費に関してナノワイヤー装置の立ち上げにかかる費用が校内の資材の活用で費用が抑えられたため,次年度使用額が生じてしまった.次年度は今年度立ち上げた装置での試作に必要な材料費や試作に用いる半導体プロセス装置に必要な費用が増加する予定であるため,その費用に充当する予定である.
|