本研究では単一の酸化亜鉛(ZnO)材料を用いて生体内の悪環境下でも能動的に移動できる自走型のカプセル内視鏡について研究開発すること,発光素子,受光素子を製作し,アクチュエータと同期させた撮像システムを構築することを目的とした.本研究での今年度の計画に対する研究実績について以下に示す. 1.最適なアクチュエータの機構と材料パラメータの最適化(線虫型,バルーン型等): ZnOの基礎的な材料特性を把握した上で,膜の応力等の機械的特性,静電容量,電気特性を評価する評価サンプルを製作し,アクチュエータ,発光素子,受光素子に関するパラメータの抽出を行う.2023年度にはカプセル内視鏡をアクティブに駆動させる手段としてひれを使って移動するアクチュエータの検討を行った.消化管上ではひれを立てて進み,液体中ではひれで泳ぐ機構の開発を進めることにし,動作検証のための試作を行った.その結果,腸壁を模した陸上の動きはトルク不足で動かなかったが,水面に浮かんだ状態では前進することができた。 2.画素サイズと画素数の最適化:発光素子に関しては,ZnO薄膜発光ダイオードやナノワイヤを用いて,その電圧の印加方法や発光強度等の測定手法について検討し特性評価する.受光素子については画素サイズを変えながら画素サイズと受光感度の関係を確認し,画素サイズを小さくしていく.最終的には,アクチュエータの動作角度と特性評価で得られた受光感度の情報を基に視野角や空間分解能を考慮した画素サイズや画素数についてパラメータを最適化する.また,画像処理方法に関してのシステム最適化を行う.2023年度はZnOプロセスの最適化検討ではZnOナノワイヤの活性化手段の検討のみでナノワイヤの結晶成長までに至らなかった.画像認識システムの最適化では腫瘍検出のアルゴリズムの検討を行い,ステレオカメラを使用して腫瘍までの距離確認手段検証実験を行った.
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