研究課題/領域番号 |
20K20246
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
大葉 隆 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (00814055)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放射線検出器 / 2次元個人線量計 / 金属メッキ糸 / 織布 / X線 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は金属メッキ糸の織布を利用した世代型の2次元個人線量計の臨床応用に向けた基礎的な開発を目指すことである。放射線(特にX線)による光電効果は原子番号の4~5乗に比例して電子を放出する作用を引き起こす。その電子は誘起的に作用した物質内で電位や電流を形成するため、物質による放射線の計測を可能にする。金属メッキ糸の織布は、高原子番号の金属を布として使用できるため、放射線による光電効果を誘起しやすい。また、織布である性質上フレキシブルであり、肌着のように軽量で、かつ、安価であり、個人外部被ばく線量の等方性被ばくの問題を解決するための理想的な2次元検出器となりえる可能性がある。2020年度は、市販されている金属メッキ糸の織布におけるX線照射時の光電効果による出力計測に焦点を置いて実施した。様々なX線照射条件で出力電圧の線量応答や管電圧の応答を確認して、感度に関する基礎的な条件を収集した。 その結果、ある程度の線量応答による直線性や照射時間の検出が可能であったが、X線の入射線量が0.7 mGyレベル以下では線量応答がなくなり感度に関して課題を残した。また、金属メッキ糸の織布における編み方において、編み方の密度が高いほど、放射線の検出レベルが高くなることが示された。さらに本研究の電位の検出機構は心電図に用いられる測定システムを利用しており、オシロスコープを用いてその測定システムの出力に関する条件及び、詳細な出力調整を実施した。加えて、本研究に関して、知的財産に関する検討を進めてきたが、本研究は既存製品の組みあわせであり、未だ検討中の状態である。2020年度は知的財産の問題があり、学会報告などの公表は実施してこなかった。 結論として、現在のところ、基礎的な検討として、直接的に金属メッキ糸の織布へX線を曝射することで、出力を得ることが可能であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗状況ついては、概ね順調であると考える。しかし、現在の放射線検出に関するデータ処理は手作業にてピーク検出及び、面積計算を実施している。このような部分を市販のソフトウエア等で、自動化することによりデータ解析のスピードアップを図りたいと考えている。 また、放射線の検出は微弱な電圧を検出しているため、周辺環境ノイズや装置ノイズの影響を受けている。そのため、ある一定のX線の入射線量以下では検出することが不可能な状況となっている。検出器における回路の検証を図るとともに、市販の電磁波シールドなどを活用して、ノイズの低減を図かりたいと考える。 これらの要因は本研究の基礎的検討を進める上で、重要な要素となり、2021年度はこのような部分へも力を入れて、研究へ取り組んでいきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は下記の2点を実施する予定である。①金属メッキ糸の編み方及び、織布加工に関する放射線の検出感度の検討:昨年度の実績より、金属メッキ糸の編み方に違いが見られたため、2次元的な編み方に関する放射線の検出感度の検討を実施する。これによって、放射線の検出に関する感度を現在の10倍くらいまで向上することを期待している。感度の向上は、また、金属を織布へ馴染ませた織布加工法を受けた織布に関する放射線の検出感度の検討を実施する。②線量計特有の依存性の検討:金属メッキ糸の織布におけるエネルギー依存性と方向依存性を検討する。放射線の種類はX線だけでなくガンマ線を含めて、広い範囲でエネルギー依存性を確認する。方向依存性は360度方向のコリメートされた照射野からの反応を検討する。 また、本研究の金属メッキ糸の織布を利用した世代型の2次元個人線量計の臨床応用のためには、2次元個人線量計のコンセプトを含めた提案を準備する必要があると考える。そのため、過去の文献を精査することを勧めることにより、どのような金属メッキ糸の織布の配置によって、どのように放射線を検出するかといった放射線を検出するスキームを2021年度中に確立する様に進めていきたい。 本研究の成果は知的財産に関する検討の結果が出次第、2021年度から学会報告等を積極的に実施してきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は新型コロナウイルスの感染状況により予定していた研究打ち合わせがWEB開催となり、旅費を支出するに至らなかったためである。2021年度は、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き次第、次年度使用額を研究打ち合わせのための旅費として支出する予定である。
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