研究課題/領域番号 |
20K20261
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
大貫 雅也 杏林大学, 保健学部, 助教 (30759775)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 完全人工心臓 / カスケード血液ポンプ / 偏心力 |
研究実績の概要 |
本研究では、完全人工心臓用ポンプとして拍動流発生能力の高いカスケードポンプを応用することを目指している。カスケードポンプのハウジングは馬蹄形のような環状形状であるため、解剖学的に重要となる流入・流出ポートの配置を、周側面近傍に開口させることが可能となる。一方で環状の流路にそって圧力差が発生することにより、インペラの回転軸を流出側から流入側に偏心させる力が働く。この偏心を改善させるため、本研究では、ポンプ内圧力分布を軸中心に平衡させる独自の流路によって、インペラに加わる偏心力を回転中心で相殺できる構造を提案し、血液ポンプとしての実現可能性を検討することを目的とした。 2021年度は、前年度までに設計したカスケード血液ポンプに対して、インペラの回転軸に加わる偏心力を実測するシステム製作に着手した。ポンプの外部からポンプ内部で回転するインペラの偏心力を測定するため、回転させない中心軸をポンプ外部まで延長し、その軸に回転支持されたインペラを回転させる構造とした。インペラの外周に永久磁石を組み込み、その外周にモータステータを配備した。ポンプ下部から突き出した中心軸は、偏心力測定用のXYステージに固定し、中心軸を介してXYステージに伝わった偏心力を2つのロードセルによって測定するシステムとした。 模擬循環回路内に偏心力測定システムを組み込み、ポンプを連続流で駆動させた状態で偏心力の測定を試みたところ、ポンプ回転数の増加に伴い、中心軸が貫通したケーシング部からの水漏れが生じてしまい、いまだ偏心力を測定するまでには至っていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の予定では、2021年度は、ポンプを連続流および拍動流で駆動させた状態で、偏心力の測定を実施する予定であったが、中心軸貫通部からの水漏れを防ぐことができず、測定に至らなかったのが直接的な原因である。また、2020年度から続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止対策の一環として、講義・実習のオンライン化に伴う準備のために研究エフォートの低下が発生したことも進捗遅延の一因である。
|
今後の研究の推進方策 |
申請時の予定に大きな変更はない。2022年度は、偏心力システムを完成させ、引き続き偏心力の測定を行う予定である。 1.インペラに加わる偏心力を測定するため、評価用ポンプおよび測定システムを製作し、模擬循環回路を接続して様々な条件で駆動させた際の偏心力を測定する。水漏れの改善に至らない場合には、測定システムの構造を見直すことも視野に入れている。 2.連続流および拍動流駆動下における血液適合性評価(溶血評価)を行う。溶血評価は、血漿成分中に含まれる遊離ヘモグロビン量を3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)法を用いて定量化する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
進捗の遅れに伴い、当初予定していたポンプおよび偏心力測定システムの製作を行うことができず、消耗品などの購入に至らなかった。現在、システム製作に必要な消耗品は、すでに所有している既存品を利用した結果、2021年度の交付金の使用には至らなかった。 これまでの未使用金および2022年度の交付金は、ポンプおよび偏心力測定システムの製作に必要な消耗品の購入、さらに血液適合性評価を実施する際に必要な試薬の購入に割り当てることを計画している。
|