研究課題/領域番号 |
20K20264
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
成田 渉 東北大学, 大学病院, 助教 (10535420)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 失語症 / 読字障害 / 眼球運動 / アイトラッカー |
研究実績の概要 |
本研究は読字障害の技術支援を動機として計画し、効果判定の要となる読字の際の眼球運動の評価方法を検討している段階にある。 先天性、脳卒中などによる後天性の読み書き障害は日常生活に深刻な影響をもたらしている。脳卒中の視点で読み書き障害に焦点を当てると、失語症においては音声言語による意思疎通の改善が優先されることから、文字言語の障害への評価や訓練の機会は相対的に少ない現状にある。若年の脳卒中患者では就学、就労、社会的手続きに関し読みの問題が大きく影響することが多く、読字障害の克服は対処すべき課題の1つとなる。 読字障害は介入と評価の観点から新規に検討を行うべき事項がいくつかある。1つは介入手段で、現状は言語機能の改善を主目的にしているが、近年の支援技術の進歩により視覚障害者用の読字機器が実用性の高い状態となっている。しかし、これらの使用が読字能力に与える影響は不明なままである。もう1つは評価方法で、現状は施行時間が長い評価用紙に基づく方法が主体である。本研究では評価方法を言語機能の側面からだけでなく、眼球運動の側面から評価することで、1)アイトラッカーを用いた短時間での評価を行う手法を見出すこと、2)読字機器によるADL、機能レベルでの変化をとらえること(機器の利用で道具を使わない際の読字能力が低下するかどうかを含む)を目的としている。 今年度は1)に重点を置き、失語症患者での読字の際の眼球運動を評価した。対象者は主に入院中の脳卒中による失語症患者。眼球運動は単語および文章の黙読、音読時にアイトラッカーを用いて測定した。パラメータはアイトラッカーで一般的に使用されている停留数、停留時間と、健常者で報告されている最適停留位置を用いた。対象者数が少ないために一定の傾向は見出しにくいものの、停留数が安定したパラメータとして使用できる可能性が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度の目標は同一外来患者を対象とした眼球運動の評価パラメータの設定、パラメータ設定に関与しない外来患者での読字機器使用前後の介入効果の検証、入院患者でのベースラインの機能評価(Historical controlの取得)の3つが目的であった。 しかし、外来患者を対象とした評価が研究実施施設の感染症対策によって困難となった。そのため、入院患者で眼球運動の評価パラメータ設定のためのデータ取得を行うことになり、当初の予定から大きく変わることになった。
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今後の研究の推進方策 |
当初のデザインは1)外来患者を中心とした眼球運動の評価パラメータの設定、2)外来患者での装置前後の評価、3)入院患者でHistorical controlを用いた介入有無での効果検証の大きく3つであった。しかし、1)、2)が外来患者へのアクセスが難しくなったことから、1)の対象を入院患者とし、3)については1)の進捗状況によるが、当初の計画から半年から1年程度遅れるものと考えられる。少なくとも成果物として脳卒中の失語症患者における読字に適した課題と眼球運動のパラメータが得られることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の開始に際し、読字障害の評価に用いる評価用紙およびアイトラッカー、読字機器の3つが必要であった。このうち、アイトラッカーが当初の見積もりよりも高額であったため、次年度予算を前倒しで使用した。 次年度は新規に必要とする物品が限られると考えられることから、計画通りの使用になると考えられる。
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