研究実績の概要 |
本研究最終年度は、非常に順調に進捗した。とくに、社会的態度ならび行動、「生きにくさ」意識ならびに、スマホゲーム頻度に、遺伝子変数が影響をあたえていることを、データにもとづき、統計的に有意な程度に見出した。すなわち、前者には、セロトニントランスポーター遺伝子多型5-HTTLPRが、後者には遺伝子一塩基多型(SNP)rs4680が、看過し難い影響をあたえていることをみいだした。 過年度には、ツイッター頻度にたいして、遺伝子一塩基多型rs53576が影響をあたえていることを見出していたので、都合、3つの社会行動に対して、各々べつの遺伝子変数が有意な影響をあたえていることを、本プロジェクトは見出すことができた。これは、日本の社会学界では、はじめての知見である。 並行してわれわれは、理論的研究もおこなった。生物学的人間理解をふまえて、理解社会学の再位置づけおこなった。高田保馬の少子化論の進化論的基盤を明らかにした。共進化とエピジェネティクスの視点から、社会構築主義を再検討した。英語圏における、3つの「進化社会学」のハンドプックの検討を行った。ある遺伝子疾病の患者の家族の語りの分析をおこなった。などなど…。 これらの成果は、いままでの日本の社会学界にはないものばかりであり、これらをまとめて一成書『遺伝子社会学の試み 社会学的生物学嫌い(バイオフォビア)を超えて』桜井芳生 (著, 編集), 赤川 学 (著, 編集), 尾上正人 (著, 編集) 日本評論社ISBN-13 : 978-4535587564 を、刊行することができた。当書は刊行直後から、注目を得、オンラインマガジン『日刊サイゾー』に、インタビュー記事が掲載された(https://www.cyzo.com/2021/04/post_274499_entry.html)。
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