研究実績の概要 |
研究代表者の小川は燃焼系のダイナミクスに大きな与える, 圧縮性・非圧縮性Navier-Stokes方程式に対する臨界適切性を研究した. そのために, 非圧縮性粘性流体の問題に対する, 時間大域的な安定性を議論し, 圧縮性・非圧縮性に共通する「境界値問題」に対応するために, Lagrange 形式で記述される流体方程式の臨界可解性を研究した. 清水扇丈氏(京大人環)と共同で, Lagrange 形式における非圧縮性粘性流体の初期値問題の可解性をFujita-Katoの原理に基づいて研究し, 可解性の限界と思われる, 臨界実補間空間での小さいデータに対する時間大域可解性を証明した. Lagrange 座標系では移流項(非線型項)が消え去るが, 変換のヤコビ行列式が現れるため, 問題は準線形化しより複雑になる. 一方, 通常Euler 座標系での可解性は, スケール不変な臨界斉次ベソフ空間において, 負の可積分次数を許す超函数での可解性が知られているが, 対応する結果がLagrange 座標形式では,得られておらず, Euler座標系での結果との乖離が認められた. 今回の研究で, こうした齟齬は払拭され, Lagrange 座標系でも限界の空間まで拡大された. これにより燃焼系において重要な境界値問題に対する臨界可解性への道が開けた. 分担者の石毛は燃焼系に直接関わる, 非線型熱方程式の研究を進め, 非線形分数冪拡散方程式が可解であるために許容できる初期関数の特異性の特徴付けを行い、可解であるための最善な十分条件を得た。また、非線形境界条件や動的境界条件化における放物型方程式の可解性や定性的性質についても研究を行った。 分担者の丸田は微小重力場の燃焼特異現象によるパターン形成に関する研究を実施し, 2020年度中の宇宙実験に向けて準備を進めている一連の研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
境界条件をもつ流体-反応拡散系の連立問題は燃焼系問題のもっとも典型的なモデル形態である. とりわけLagrange 形式で書かれた流体方程式の可解性に対して, Fujita-Katoに原理に基づく可解性理論の糸口が見つかったことにより, 燃焼系で必須な自由境界問題に対する臨界可解性の問題に一気に切り込めるめどが建った. 今後は境界条件に応じた境界値問題に対する最大正則性などの線形評価と, 非線型構造(爆発・特異性の発生・正則性)といった伝統的な手法で得られる結果と, 燃焼が引き出す可能性のある, 特異摂動となる挙動の抽出に進むことができる.
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今後の研究の推進方策 |
各分担者には相互の連絡を行いながら, 共同研究を推進する. とりわけ東北大数理科学連携研究センターでの活動として, 国際燃焼学会が開催され, その中でのsessionの一つに対して退化放物型非円形偏微分方程式の理論・数値解析・実験を取りまとめたsessionが予定されている(現報告段階では開催予定). そこにおいて理論的な研究の実学への寄与と, また実際の無重力下における燃焼実験などとの結果と自由境界問題の設定などについて, 研究をすりあわせ, 自由境界問題に対する藤田-加藤の原理の適用可能性について探索する予定である. また燃焼球の宇宙実験はこれら無重力下の理論的数学研究がもっとも正確に反映する設定といえ, 理論的研究を上回る実際の燃焼のダイナミクスが判明する契機となり得ることが期待される.
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