研究課題/領域番号 |
20K20285
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂和 洋一 大阪大学, レーザー科学研究所, 准教授 (70242881)
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研究分担者 |
福田 祐仁 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 上席研究員 (30311327)
森田 太智 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (30726401)
Morace Alessio 大阪大学, レーザー科学研究所, 助教 (70724326)
星野 真弘 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90241257)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 相対論的磁気リコネクション / レーザー宇宙物理学 / 粒子加速 / 協同トムソン散乱計測 / 高出力レーザー / X線自由電子レーザー / X線小角散乱 / プロトンバックライト計測 |
研究実績の概要 |
磁気リコネクションでは、プラズマアウトフローの流速が磁場強度に比例するアルフベン速度vAとなり、強磁場プラズマ中ではvA がほぼ光速となるため、相対論的なリコネクションによる粒子加速がおこる。この相対論的磁気リコネクションの基礎実験として、2つのキャパシタコイルターゲット (CCT) に高出力激光XII号レーザーを照射する事によって得られる100T 級の反平行強磁場を用いた磁気リコネクション実験を行なった。加速された電子とイオンのエネルギースペ クトルを計測し、対照実験として行なった100T 級の平行強磁場配位での結果と比較を行った。また生成された磁場構造を、高強度レーザーのLFEXを用いたプロトンバックライト計測で明かにした。さらに、プラズマの温度・密度・流速をプローブレーザーを用いた協同トムソン散乱計測によって求めた。 相対論的臨界密度程度のプラズマに高強度レーザーを入射すると励起されるワイベル不安定性によって数 10 kT の自己生成乱流磁気島が発生する。この乱流磁気島による荷電粒子の相対論的磁気リコネクション加速の予備実験として、不安定性によって生成されるワイベルフィラメント構造の時間・空間発展を自由電子レーザー (XFEL)を用いたX線小角散乱 (SAXS) によって計測するための基礎実験を行っている。本年は、直径 0.5 um、間隔 1.0 umのロッド集合体ターゲットに高強度レーザーを照射してワイベルフィラメントを模擬した3次元構造のプラズマを生成した。ビームストップに代えて新規開発したAl製ステップフィルターを用いて遅延時間ののちにXFELを照射し、SAXSによってプラズマ膨張にともなう低次散乱光を含むスペクトルの時間発展を計測した。これにより、長時間にわたるプラズマ膨張計測が可能となり、ワイベルフィラメントの時間・空間発展計測へ適応が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
激光XII号レーザーと2つのキャパシタコイルターゲットを用いた100T級の準定常強磁場中の磁気リコネクション実験では、磁場や加速イオン・電子のスペクトルのを計測した。本実験手法の特徴として、キャパシタコイルターゲットの極性を変えることによって磁気リコネクションの起こらない平行強磁場配位で同様の実験を行うことができる。反平行と平行強磁場配位で結果との比較・検討を行った。また生成された磁場構造やプラズマの温度・密度・流速を同時に計測し、磁気リコネクションに重要なプラズマパラメータを導出することができた。 高強度レーザーを用いた乱流磁気島による磁気リコネクション加速実験では、高強度レーザーを用いてワイベル不安定性を励起し、生成される乱流フィラメン ト構造の時間・空間発展をXFELを用いたX線小角散乱 (SAXS) によって計測するための基礎実験を行っている。高強度レーザーをロッド集合体ターゲットに照射することによっててワイベルフィラメントを模擬した3次元構造のプラズマを生成し、SAXSによってプラズマ膨張にともなうスペクトルの時間発展を計測した。従来SAXS信号に検出される高強度XFELの直接光や0次光を遮断するために設置されていたビームストップを、新規に開発した3枚のアルミフィルターを組み合わせたステップフィルターに置き換え、0次光を含むすべての散乱光スペクトルを計測することに成功した。また新たに電子スペクトル計測と、ターゲット近傍に固体飛翔体検出器を設置することによって加速されたイオンの空間分布計測に成功した。これらの結果より、ワイベルフィラメントの時間・空間発展と加速粒子の同時計測が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響でこれまでに実現できていない、高強度レーザーを用いた乱流磁気島による荷電粒子の磁気リコネクション加速実験を、インド タタ基礎物理研究所のTIFR500TWレーザーを薄膜ターゲットに 照射する事によって行う。ワイベル不安定性を励起して生成される乱流磁場およびフィラメント構造の詳細な時間・空間発展を、プロープレーザーによるコットン・ ムートン計測によって明らかにする。また、高強度psパルスLFEXレーザーのターゲット近傍に小さな焦点距離を持つ集光ダブルプラズマミラーを導入してレーザーの集光系を小さくし、照射強度を照射強度を約1桁上昇させる。これによりLFEXレーザーを用いたワイベル不安定性励起の実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で2021年度に実現できていない、インド タタ基礎物理研究所のTIFR500TWレーザーを用いた乱流磁気島による荷電粒子の磁気リコネクション加速の実験を2022年度に行う。そのため、期間延長を行い研究費を渡航費と必要な消耗品の購入に用いる予定である。また2021年度に行われた激光XII号レーザーと2つのキャパシタコイルターゲットを用いた100T級の準定常強磁場中の磁気リコネクション実験を、2022年度にも継続して行うことになった。期間延長により、ターゲット製作費や光学計測・プロトンバックライト計測に必要な消耗品の購入を行う予定である。
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