令和2年度に、サファイの複屈折量が想定以上に大きいことも判明した。それにより、入射するレーザー光が直線偏光であった場合、その10%程度が、入射直線偏光と直行する成分に変換されてしまうことも判明した。将来の鏡基材としては、これも問題であるので、数社の製造メーカーを調査し、問題が解決しうる製造法があるかどうかの検討が必要となり、調査を行い、一部はサンプルを取り寄せ、性能評価とフィードバックを行ってきた。結果、特定のメーカーにおいては、直径10cm厚み6cmの基材の大きさレベルにおいては、十分複屈折を抑えることが可能であることが分かった。 結晶性薄膜コート鏡の作成の検討にもはいった。直径が1インチ程度の大きさであれば、その損失をppmレベルに抑制可能であることは判明したが、2インチまで大きくすると、ディフェクトなどの影響で、大面積領域では、薄膜形成時の損失増加により、期待される低損失性能が得られないことが判明した。研究遂行上、目的とする結晶性コーティング鏡は期待される低損失性能を有することが必要不可欠なため、このディフェクトの除去のための方策について、検討が必要となった。このディフェクトの内、ストレス応力によるディフェクトのロスへの影響は小さいことが判明した。それ以外のディフェクトによるロスへの影響の解明を進めている。 さらに、将来の30cmを超えるレベルの結晶性コーティング作成の道筋についても検討したが、現状の20cmレベルの作成装置を一新し、かなりの投資を伴って進めなければならないことも判明した。
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