研究課題/領域番号 |
17H06211
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小野 行徳 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (80374073)
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研究分担者 |
Moraru Daniel 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (60549715)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | フォノン / シリコン / エネルギー散逸 |
研究実績の概要 |
従来の熱電変換(あるいは既存の電子系⇔格子系エネルギー変換)は、平衡状態の熱力学に基礎を置き拡散(ドリフト)現象を扱うため、本質的に低速であり、如何なる材料,構造を用いようとも、エネルギー緩和時間より高速に動作させることはできない。一方、MOSトランジスタスのエネルギー消費は、ホットキャリアのエネルギーが格子系(フォノン)のエネルギーへと変換され最終的に「熱」(常温下での音響フォノン)として散逸することにより起こるが、この過程は極端な非平衡プロセスであり、避けることのできないものと考えられている。 本研究では、上記の既成概念を変革し、緩和時間の壁を超えて「高速な」電子系⇔格子系エネルギー変換を実証し、これまで不可避と考えられていたホットキャリアのエネルギー散逸が制御可能であることを示すとともに、MOSトランジスタをベースとした高速信号処理回路に組み込み可能な、高速エネルギー変換デバイスを提示する。 本年度はその準備段階として、T字型デバイスの電子エネルギー散逸過程を詳細に調べ、電子電子散乱が極めて重要な役割を担っていることを明らかにした。また、この電子電子散乱を回避して、フォノンによるエネルギー散逸過程を調べる手法を新たに発案した。 同時に、電子電子散乱によりトランジスタの電流を増幅できる可能性を見出した。具体的には、電子電子散乱によりT字領域に電圧降下が生じ、この電圧降下がベース電流を引き起こす現象を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
T字型デバイスの電子エネルギー散逸過程を詳細に調べ、電子電子散乱が極めて重要な役割を担っていることを明らかにした。また、この電子電子散乱を回避して、フォノンによるエネルギー散逸過程を調べる手法を新たに発案した。このことは、本課題のベースとなる知見であり、今後順調に解析を進めることができることを示している。 一方、電子電子散乱によりトランジスタの電流を増幅できる可能性を見出したことは、新たな知見であり、今後、エネルギー散逸制御に向けた新たな手法の開拓に道を開くものである。
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今後の研究の推進方策 |
T字型デバイスの解析を中心に進める。電子濃度を変化させることにより、フォノン散乱効子電子散乱が極めて重要な役割を担っていることを明らかにした。 一方、この電子電子散乱を回避して、フォノンによるエネルギー散逸過程を調べる手法を新たに発案したこことを受け、電子電子散乱によりT字領域に電圧降下が生じる現象を利用したデバイスを提案し実証する。また、そのための基礎実験を行う。
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