研究課題/領域番号 |
17H06215
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高井 伸雄 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (10281792)
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研究分担者 |
重藤 迪子 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (90708463)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | プレート内地震 / 内陸地震 / 2018年北海道胆振東部地震 |
研究実績の概要 |
プレートの沈み込み帯付近で発生する地震の震源特性として,短周期励起特性が地震タイプ・深さ等により異なる事が指摘されてきた.これまでに,東北沖の日本海溝付近および,北海道東岸域で発生する地震の短周期地震波の励起特性を把握するため,地震動予測式に基づいて地震タイプ間の短周期励起特性の比較を実施してきた. 2018年9月6日に2018年北海道胆振東部地震が研究対象地域で発生した.本地震の地震タイプは対象としていた地震タイプとは異なっているものの,内陸地震としては,国が地震発生層と想定している深さよりはるかに深く約40kmという震源深さを持つ地震であり,且つ,短周期レベルが大きいことが指摘されている.またマントル内部に剥離した近くの一部内で発生している可能性もあるとの指摘も存在する. 本地震の震源特性をも比較対象とするべく,昨年度より,これまでに計画していた工程の一部を充実させた.2018年北海道胆振東部地震の発生した地域は,これまでにスラブ内地震の短周期レベルを検討してきた地域であり,本地震の発生直後より,臨時余震強震観測や微動観測と浅部探査である表面波探査を実施して,正確なサイト増幅特性を把握するために当該地域の観測点の地下構造探査をさらに充実させた.それにより深部~浅部までの統合速度構造が推定されている. また,2018年北海道胆振東部地震における地震動による木造被害集中地域での危険な強震動に関して, むかわ町付近に於いて地震発生直後から臨時余震強震観測および地下構造探査を面的に展開することで,発生要因の検討を追加して実施し,論文として公表している.加えて,震源の短周期レベルに関係する,2Gを超える大加速度が記録された追分観測点(K-NET,KiK-net)の2点での短周期の増幅特性を詳細に把握するため2点間で高密度な表層の探査を実施している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに予定していた対象地域の観測地点での地下構造探査の実施に加え,2018年北海道胆振東部地震における地震動による木造被害集中地域での危険な強震動に関して, むかわ町付近に於いて地震発生直後から臨時余震強震観測および地下構造探査を面的に展開することで,発生要因の検討を追加して実施し,論文として公表している.加えて,震源の短周期レベルに関係する,2Gを超える大加速度が記録された追分観測点(K-NET,KiK-net)の2点での短周期の増幅特性を詳細に把握するため2点間で高密度な表層の探査を実施している. 比較的地震の少ない地域であり,実地震記録を用いた地下構造の推定は困難な地域であったが,設置した余震観測点を含めて,余震記録が蓄積され,当初予想していた以上の解析が実現している.微動観測等による詳細な地下構造推定結果と,余震記録等との比較を実施し,推定した地下構造モデルの妥当性が検討された.当初予定していた作業の注力配分が異なったものの,全体の行程からみると,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
SS-GMPEの考え方に立脚して震源特性の把握に努め,4年間で研究が実施されるが,2018年北海道胆振東部地震の短周期励起が高い要因に関しての検討も継続して実施する.特に,この比較的深い中程度の地震での危険な地震動の発生要因の解明は,対象としてきた地域での,プレート内地震の震源特性把握の制度向上のために重要である. SS-GMPEの構築(継続):応答値データの距離による減衰特性を検討するため,データベースを基に各地震タイプでSS-GMPEを構築し,既往の距離減衰式を用いて各地震タイプの特徴を周期帯毎に把握し,震源特性を検討するに耐えうる特定の対象観測点を,これまでに実施した地下構造モデル構築点の状況と合わせて,を選定する. 昨年度の北海道内の観測点で観測されたスラブ内地震における強震記録の解析を通し,防災科学技術研究所(NIED)の公開する3次元地下構造モデルを2018年北海道胆振東部地震およびその余震記録から検討する.さらに,昨年までに実施してきた各種地下構造探査結果を元に,浅部~深部への精度の高い地下構造モデルの構築と併せて,実地震記録の検討も含めて,高精度なサイト増幅特性を評価し,当初,計画に含まれていなかった内陸の比較的深い地震の震源特性も含めて,より正確な把握を目指す. これにより,プレート内地震・プレート境界地震・内陸の比較的深い地震の震源特性のうち,特に短周期レベルに関しての性質が把握できると考えている.
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