研究課題/領域番号 |
17H06249
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
酒井 正博 宮崎大学, 農学部, 教授 (20178536)
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研究分担者 |
稲田 真理 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 任期付研究員 (50723558)
引間 順一 宮崎大学, 農学部, 准教授 (70708130)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | クルマエビ / 細胞培養 / 細胞増殖因子 / リンパ様器官 |
研究実績の概要 |
細胞の機能解析やウイルスの研究を行うにあたり株化細胞の存在は必須である。1980 年代中頃からエビ類においても長期培養可能な細胞株の樹立が試みられてきたが、未だ実現していない。本研究は、これまで試みが行われなかったエビ類の細胞の長期培養に最適なサプリメントの作製から、ヒトの株化細胞(ES 細胞やiPS 細胞)作製過程で使用されている最新技術(フィーダー細胞や遺伝子導入)を取り入れてクルマエビの細胞を株化させるまでを体系立てて行い、長期間培養可能または無限増殖能を持つエビ類の株化細胞を樹立することを目的としている。本研究は、応募者らが得意とする海産動物の細胞培養技術および最先端の遺伝子操作技術を駆使するエビ類初の挑戦的な内容となっており、エビ類の株化細胞樹立に成功すれば、エビ類の免疫・神経・内分泌系に関する基礎・応用研究が飛躍的に進むと思われる。 初年度は、以上のことを遂行する上で重要となる遺伝子基盤(細胞増殖遺伝子群や細胞周期関連遺伝子群の探索)の構築を行い、さらに基礎的な培養条件を確立するためにクルマエビの各器官の初代培養を試みた。また、器官そのままを培養した器官培養についても試み、その際の器官内の細胞が発現する遺伝子発現パターンの継時的変化を網羅的に明らかするために、次世代シーケンサーによるRNA-seqを実施した。さらに、細胞増殖を誘導すると期待されるクルマエビの血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を用いて、組換えタンパク質の構築を行った。今後これを用いて、初代培養に培養液に添加することでそれらの細胞増殖への影響を観察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、5尾のクルマエビから無菌的にリンパ様器官、中腸線、卵巣を摘出し、組織をバラバラにほぐした後にコラゲナーゼ処理を行い、初代培養を試みたところ、最も安定して、初代培養が成功したのはリンパ様器官であった。これと平行して、組織をバラバラにせず、半分に切断した面を下にして細胞培養プレートの底面に細胞をはい付けた後に、細胞培養を行ったところ、接着細胞の数が上述した方法よりも多く観察できた。しかし、何れの方法も培養3日間程度の後に、死細胞が増えて、全体の細胞数が減少した。このことを踏まえて、細胞増殖は、培養開始3日目ぐらいから何らかの変化が起こると考えた。 また、リンパ様器官をそのままを培養する器官培養を試み、器官内の細胞が発現する遺伝子発現パターンの継時的変化を網羅的に明らかするために、次世代シーケンサーによるRNA-seqを実施した。クルマエビから無菌的に採取した78個(39尾分)のリンパ様器官を用いて24穴プレートで器官培養を行い、培養開始後0、6、12、24時間、3、6、12日において組織片を取り出し、RNA-seqを行った。 他方で、細胞増殖を誘導すると期待されるクルマエビのVEGF遺伝子を用いて、組換えタンパク質の構築を行った。クルマエビVEGF遺伝子をバキュロウイルス発現系のベクターに組み込み、昆虫細胞sf9に発現させた。その結果、ターゲットサイズの約22kDa付近に2本の薄いバンドが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
クルマエビのリンパ様器官を用いた器官培養については、RNA-seqの解析作業を進め、リンパ様器官組織内において培養中に変動する遺伝子を明らかにする。また、これらの遺伝子が接着細胞培養の3日以降にも発現が低下するかについて検討する。他方で、VEGFについては、リコンビナントタンパク質の精製を行い、細胞増殖能の有無を確認する。
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