研究実績の概要 |
細胞の機能解析やウイルス研究を行うにあたり株化細胞は必須なツールである。1980年代中頃からエビ類においても長期培養可能な細胞株の樹立が試みられてきたが、未だ実現していない。本研究は、これまで試みが行われなかったエビ類の細胞の長期培養に最適なサプリメントの作製から、ヒトの株化細胞作製過程で使用されている技術を取り入れてクルマエビの細胞を株化させるまでを体系立てて行い、長期間培養可能なエビ類の株化細胞を樹立することを目的としている。令和2年度は、クルマエビのリンパ様器官由来の細胞が、一週間程度しか培養できない理由を解明するために、初代培養中に生細胞と死細胞の割合が大きく変化するタイミングに何か特別な遺伝子の発現パターンの変化があると考え、クルマエビのリンパ様器官由来の細胞の初代培養において、生細胞と死細胞の割合が大きく変化する期間として、培養開始3日目から6日目の細胞に着目し、これらの細胞についてトランスクリプトーム解析を実施した。その解析結果から、PDGFRA, COL4A2, GNB5, VEGFR遺伝子などの発現が、培養開始3日目から6日目の期間で大きく減少していることが明らかとなった。さらに、網羅的なバイオインフォマティック解析を継続したところ、OG解析において上記の遺伝子群が含まれる生物機能クラスで遺伝子発現の変化が大きかった。クラスター解析の結果、リンパ様器官組織細胞の培養4日目にVEGFシグナル経路やリボソーム関連タンパク質遺伝子群の発現が顕著に減少していることが分かった。これらの遺伝子群が、細胞培養のための増殖や分裂にどの様に関与するかについて、今後検討が必要である。
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