研究課題
代表者は、生物システムを非生物システムから区別する性質である「自己増殖能」を効率性の観点から徹底的に理解することを試みるために本研究を実施している。特に、生命(=増殖)システムの本質を理解するためには、その化学的な最大効率を明らかにする必要があると考えた。究極的には2分とか3分とかで倍加するような生物を開発することを目指す研究を通じ、「最も生物らしいひとつのシステム」がどのように構築し得るのかについてアプローチしたいと考えている。今年度は昨年度に続き、申請書記載の研究計画を実施するとともに、異なる観点の研究項目も実施した。まず、自然界から増殖速度が大きい(倍加時間が短い)バクテリアを探索する技術を完成させ、複数の高速増殖(分離)株を入手することに成功した。これらの株の内いくつかについて、次世代シーケンサーを用いたゲノム解析を行った。ゲノムの大きさ(長さ)は増殖速度とは相関せず、因子Xと名付けた別の因子が増殖速度の高速化に寄与していることが推測された。今後の研究では、この仮説を検証するための研究を展開したいと考えている。また、本研究では大腸菌の増殖速度を最大限に高めることができる培養条件を既に構築しているが、こちらについても更なる条件検討を行うことにより効率的に大腸菌を増殖させる条件が明らかになってきた。また、培地添加物として培地中に導入すると効果的であるいくつかの成分を特定することができ、それらの添加量も最適化した。なお、バクテリアの増殖に対する律速となるのは、タンパク質合成装置リボソームの主成分であるリボソームRNA (rRNA)の数であることが古くから指摘されている。高速培養条件、あるいは高速増殖株で翻訳系にどのような変化が起きるのかについても併せて検討していく予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Microbiology Resource Announcements
巻: 9 (21) ページ: e01591-19.
10.1128/MRA.01591-19