研究課題/領域番号 |
20K20303
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
亀井 保博 基礎生物学研究所, 生物機能解析センター, 特任准教授 (70372563)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱ショック応答 / HSF / 赤外レーザー / 温度計測 / biothermology |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、生物における温度に関わる現象を理解するための理論を考えることである。まずは、さまざまな生物種HSF1の応答温度を、変温動物モデルとしてメダカ(個体)で、また、恒温動物モデルとしてマウス(培養細胞系)でそれぞれ統一した系で評価した。メダカ生体内(in vivo)での応答温度を検証するためのトランスジェニック動物での実証のため、熊本大学と共同研究でレシピエントであるメダカHSF1のKOを確立に関して論文化した(Frukawa et al, Sci Rep, 2019等)。2020年度は、10種の生物種のHSF1を実際にメダカ胚あるいはマウス培養細胞に導入・発現させて、熱ショック応答温度を解析した。熱ショック応答の時間的な経過をqPCRによるmRNA量の定量、および、タイムラプスイメージング(蛍光タンパク質あるいはルシフェラーゼ発光)による発現解析を行い、個体ではおよそ12時間、細胞では4時間でタンパク質量が最大になることを確認した。そして、熱ショック温度を振って上記時刻でデータを取ることで、それぞれの応答を評価した論文投稿した。 本課題で最も重要な「生体・細胞における熱の伝わり方の理解」のために、新たな生体内温度イメージング法を開発しているが、これまで大阪大学と共同研究で光毒性の少ない長波長域で励起が可能な温度プローブを開発し、培養細胞系への導入が完了し、赤外レーザー照射による温度変化を高速で観測できる顕微鏡の構築も完了した(現在論文投稿中)。 一方で、IR-LEGO顕微鏡法の応用として国際共同研究も実施し、熱ショック応答による遺伝子発現ではなく、単一細胞アブレーションによる神経細胞再生過程の解析に加え、分子同定のための追加実験を実施した(国際共著論文受理済みZeng et al. Open Biol, 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度完了した熱ショック負荷方法の論文の投稿と、顕微鏡光学系の論文の投稿が完了し、一方で赤外レーザー局所照射によるアブレーション法を応用した国際共著論文も受理された。
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今後の研究の推進方策 |
現在投稿中の論文の受理を目指す。本課題の展開によって、熱動態解析用の顕微鏡光学系で不足していた高速カメラに関して、昨年度基盤研究(B)が採択され、それによって購入が可能となり研究の展開が図れた。本年度はこの高速撮影用のCMOSカメラによる熱動態解析を本格的に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナ感染拡大により、共同研究等のための旅程が全てキャンセルとなったため、旅費は全く使用しなかった。同理由により、一時テレワークとなるなど消耗品等の支出額も少なくなったため残額が発生した。本年度は感染拡大状況にもよるが、積極的に共同研究等を昨年以上に進めたいと考えている。
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