研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、生物における温度に関わる現象を理解するための理論を考えることである。まずは、さまざまな生物種HSF1の応答温度を、変温動物モデルとしてメダカ(個体)で、また、恒温動物モデルとしてマウス(培養細胞系)でそれぞれ統一した系で評価した。メダカ生体内(in vivo)での応答温度を検証するためのトランスジェニック動物での実証のため、熊本大学と共同研究でレシピエントであるメダカHSF1のKOを確立に関して論文化した(Frukawa et al, Sci Rep, 2019等)。これまでの経験から、熱ショック負荷方法が不安定であったため、より安定的な熱ショック温度と時間負荷のための実験系を確立した(論文投稿中)。2021年度は、これまでにクローニングを完了した約10種の生物種のHSF1から幾つかのクローンをメダカ胚に導入しトランスジェニック系統の作出を行った。 本課題で最も重要な「生体・細胞における熱の伝わり方の理解」のために、新たな生体内温度イメージング法を開発しているが、これまで大阪大学と共同研究で光毒性の少ない長波長域で励起が可能な温度プローブを開発(論文投稿中)し、培養細胞系への導入が完了した。赤外レーザー照射による温度変化を高速で観測するための顕微鏡を、基盤B(20H02586)の予算により導入した高速カメラを使って顕微鏡光学系を構築した。赤外レーザー照射による温度変化を上記温度プローブで確認した。一方で、メダカの蛍光を定量的に評価する顕微鏡ならびに画像解析法を確立し、共同研究として実施し、成果を報告した(Beppu et al, BBRC, 2022)。
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