研究課題/領域番号 |
17H06267
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
荒川 博文 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (70313088)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 液-液相分離 / 液滴 / membraneless organelles / ミトコンドリア / 代謝反応 / p53 / がん抑制 |
研究実績の概要 |
本年度の研究からMieapによって誘導される構造体が、液-液相分離(Liquid-Liquid Phase Separation: LLPS)によって形成される液滴(Liquid Droplet: LD)であることが明らかになった。そこで、これまでMieap誘導性液胞様構造物(MIV: Mieap-induced vacuole)と呼んでいた構造物をMieap液滴(MLD: Mieap Liquid Droplet)と改名した。これまで膜を有した液胞様構造物と予測していたMIVは、実は膜を有しないタンパク質の濃縮体であった。さらにMieap液滴は、ミトコンドリアの損傷などに応答して誘導され、ミトコンドリアから発生する可能性があることを明らかにした。ライブセルイメージング解析から、Mitotracker-redやMitotracker-greenは、MIV/MLDの増大に伴い、MIV/MLD内へ取り込まれて減少していった。これまでこの様子を観察して、ある種のマイトファジーと予測していたが、生細胞のイメージング解析からは、DsRed-mitoやAcGFP-mitoなどのミトコンドリア局在タンパク質の、MIV/MLDへの取り込みは観察されなかった。一般的に液滴は、膜のないオルガネラとして機能して、ある種の酵素と基質を局所に濃縮することで、その酵素反応を促進することが知られている。Mieap液滴がミトコンドリアから液-液相分離によって発生する液滴と仮定すると、ミトコンドリアのどのような物質を相分離し、局所へ濃縮し、どのような反応を促進しているのかを明らかにする必要があると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【1】蛍光免疫染色、GFP融合タンパク質発現、免疫電子顕微鏡解析などから、Mieapがタンパク質の濃縮体であるMieap液滴を形成することを明らかにした。 【2】GFP-MieapとApple-TOMの同時ライブセルイメージング解析から、Mieap液滴がミトコンドリアから発生することを明らかにした。 【3】GFP-MieapとApple-TOMの同時ライブセルイメージング解析から、巨大化したMieap液滴もミトコンドリアの中に存在していることを確認した。 【4】DsRed-mitoやAcGFP-mito、mtDNA(SYBR GreenI)のいずれもMieap液滴へ相分離されなかった。 当初はオートファジーとは異なるリソソームによるミトコンドリアの分解機序であると予想していたが、本年度の解析から液-液相分離によってミトコンドリアに発生する液滴であることが明らかになったため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の解析から、Mieapが誘導する構造体が、液-液相分離によって形成される液滴であることが明らかとなった。今後は、Mieap液滴として、ミトコンドリアのどのような物質を標的としてこの相分離が起こり、ミトコンドリアのどのような反応を制御しているのか、を明らかにする必要があると考えている。またこれまでの観察から、Mieapはミトコンドリアの健常性維持や機能制御に何らかの役割を有しており、その意味からMieap液滴はどのようにミトコンドリアの機能制御に関わるのかという観点からの解析も必要と思われる。最終年度は様々な観点からMieap液滴の本態解明を推進する方針である。
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