研究課題
成体の動脈血酸素分圧が90-100 mmHg程度であるのに対し胎児循環では25-35 mmHgと低く保たれていることに着目し、出生前後の酸素分圧変化が心筋細胞の分裂停止と機能成熟に向けたシグナルとして利用されているというアイデアから心筋細胞において出生前後で発現変化の大きな遺伝子をスクリーニングし、その一つとしてFam64aを同定した。Fam64aは Pimreg、Cats、Rcs1とも呼ばれ、これまでに乳癌細胞などで発現亢進が報告され細胞周期制御における役割が推測されていたが、正常機能についての報告は無かった。胎生期のマウス心筋細胞で強く発現していFam64aは出生と同時に急激に発現低下し、胎児培養心筋細胞の実験でも酸素濃度の上昇により発現が低下することを確認した。また、内因性発現が消失する出生後においても心筋細胞特異的にFam64aの発現を維持するトランスジェニック(TG)マウスを作成した。このマウスは、心筋細胞の分裂能が維持される一方で心筋細胞の分化・成熟が損なわれ、成長に伴って心機能障害を呈した。その分子メカニズムについては転写因子Klf15に着目した。Klf15は骨格筋細胞、脂肪細胞などで分化促進し、心筋細胞においても心臓調律を確立する因子として機能し電位依存性Kチャネル相互作用タンパク質などの発現促進が報告されている。TGマウスでこれらのタンパク質発現抑制を確認し、更にKlf15の阻害を仲介しうるFam64aの相互作用パートナーとしてグルココルチコイド受容体(GR)に着目してHEK293T/17細胞のルシフェラーゼレポーターアッセイにて、Fam64aのGRを介したKlf15の転写活性化阻害作用を確認した。これらからFam64aが細胞周期促進因子として心臓再生に応用出来る可能性が示唆された。
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