研究課題/領域番号 |
17H06281
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原田 浩二 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80452340)
|
研究分担者 |
S Youssefian 京都大学, 医学研究科, 教授 (00210576)
高橋 勉 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20270845)
奥田 裕子 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (30709663)
小泉 昭夫 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (50124574)
尾野 恭一 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (70185635)
小林 果 三重大学, 医学系研究科, 講師 (70542091)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
|
キーワード | 疼痛 / 温度 / 気象環境 / 細胞内輸送 / ナトリウムチャネル |
研究実績の概要 |
神経障害性疼痛は、高齢者をはじめ多くの人々が経験し、低気圧や寒冷曝露で誘発されることが多い。近年、原因として脊髄後根神経節でのNav1.9ナトリウムチャネルの発現増加が原因となることが明らかになってきた。我々は、家族性で、気象の変化で誘発される神経疼痛を発症する7家系の患者を遺伝子解析し、Nav1.9 (遺伝子名SCN11A) の遺伝子異常を通じて、 細胞膜表面での発現が環境温度に依存することを見出した。本研究の目的は、温度依存性Nav1.9の発現に着目し、そのメカニズムの詳細を明らかにすることである。 小児四肢疼痛発作症の原因遺伝子として同定したScn11a p.R222S変異マウスを用い、気候変動として寒冷による疼痛行動変化の検証を行った。野生型マウスと比較して、低温処置後のScn11a変異マウス(p.R222S)は機械刺激性アロディニアを一過的に示した。一方で、低温処置による炎症の生化学的・器質的な徴候は認められなかった。Scn10aノックアウトマウスをCRSPR-Cas9法で作製し、Scn11a変異ノックインマウスと交配してdouble mutationマウスの樹立に取り組んだ。 現在までに集積した疼痛家系は73家系であり、家系は日本全土にわたっていることが分かった。そのうちSCN11A 変異を持つ家系は23家系(32 %)であった。特に東北地方において、SCN11A p.R222H変異を持つ家系は全体の10 %(43 %)を占めており、p.R222H変異が原因となる本症患者は特に東北地方では多く存在すると考えられ、疑い症例に対するR222H/Sスクリーニングは有効であるといえる。小児四肢疼痛発作症の新規家系の探索と関連するNav1.7, Nav1.8, Nav1.9遺伝子解析を実施している。新規Nav1.9遺伝子変異(p.N804D)が原因の新たな家系が同定され、寒冷・低気圧など気象変化と疼痛発作の強い関係が見いだされている。新規Nav1.9遺伝子変異の構造機能解析を予定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
温度依存性Nav1.9の輸送系、介在因子の解明を行う。タグ融合遺伝子発現マウスでNav1.9 の膜発現量の増強があるかどうか検証する。個体における寒冷曝露、気圧変化により、疼痛過敏が引き起こされることを検討し、その介在するmediator候補を評価する。一方、作成された遺伝子改変マウスについて寒冷曝露、気圧変化を組み合わせて、von Freyテスト、hot plateテストを主として行動実験により疼痛過敏性を評価する。引き続き、電気生理学的に変異体、上記検討で得られたmediatorによる温度依存性の評価をパッチクランプで行う。輸送路については、Nav1.9 の輸送系についてWT、L811Pを対照として輸送に関わる結合タンパクの探索を行う。小児四肢疼痛症の患者の全国的な分布を疫学調査を行う。また小児四肢疼痛発作症患者においてNav1.9以外の遺伝子の変異を探索し、Nav1.9の輸送に関与しうる因子を検討する。 種々の遺伝子改変(siRNA、CRISPR によるゲノム編集)細胞の提供、イメージング、臨床検体の全ゲノム変異検索を共同して行う。
|