研究課題/領域番号 |
17H06293
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
横川 慎二 電気通信大学, i-パワードエネルギー・システム研究センター, 准教授 (40718532)
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研究分担者 |
曽我部 東馬 電気通信大学, i-パワードエネルギー・システム研究センター, 准教授 (90778367)
澤田 賢治 電気通信大学, i-パワードエネルギー・システム研究センター, 准教授 (80550946)
市川 晴久 電気通信大学, i-パワードエネルギー・システム研究センター, 特任教授 (80463959)
川喜田 佑介 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (30468540)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | バーチャルグリッド / ポリシーアウェアDCネットワーキング / 深層強化学習 / 制御系セキュリティ / システムレジリエンス / DQNアルゴリズム / 重複分散運用 / 創発性不具合 |
研究実績の概要 |
本研究は、低電圧DC協調給電と送電線への非依存を特徴とし、再生可能エネルギーを指向した電力グリッド技術である、バーチャルグリッド(離れた機器を有線・無線によって仮想的に1つの電力網として扱う技術)の開発と実証を行う。これにより電源グリッドにポータビリティとレジリエンスを付与する。平成29年度には、計画に従って①ポリシーアウェアDCパワーネットワーキングの構想確立、②実証用バーチャルグリッドの基礎設計、③外部発信と評価のフィードバック体制の確立を進めた。また、プラットフォームへの実装を計画している、キーアプリケーションとしての関連技術の基礎研究を推進した。 第1に、市場動向分析に基づくDCパワーネットワーキングの構想と、必要となる関連技術に関する議論を進め、再生可能エネルギーの活用を情報通信技術を用いて議論する特別企画セッションと、自動制御関連講演会のセッションを通じて公開、議論した。 第2に、プラットフォームの基幹部分を荷うクラウド環境の活用可能性に関する検証を完了した。クラウド基盤を活用し、デバイスの認識と制御を行う基礎実験を行なった。この結果に基づき、実証実験に向けたハードウェア・ソフトウェアの基礎設計に着手した。 第3に、基幹通信企業と通信機器企業との共同研究体を構築し、マーケットニーズと技術的妥当性の検証と、社会実装を前提とした検討を開始した。さらに、シンポジウムを主催して、各メンバーの共同研究先を中心とした産学の関係者から、フィードバックを集める体制を構築した。 基礎研究としては、スマートエネルギーシステムの深層強化学習手法、大規模システムにおいて電力動揺抑制を実現するグルーピングと重複分散運用手法、複雑システムのレジリエンス確保に必要となる創発的不具合の設計段階での検証手法などについて研究を進めた。自動制御連合講演会におけるオーガナイズドセッションを通じて公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において、初年度の目標としていた①ポリシーアウェアDCパワーネットワーキングの構想確立、②実証用バーチャルグリッドの基礎設計、③外部発信と評価のフィードバック体制の確立について、検討結果の公表と具体的な開発着手を含めて達成した。特に、基幹通信企業と通信機器企業との共同研究体により、マーケットニーズと技術的妥当性を検証し、社会実装を前提とした開発を進めている。また、関連技術の基礎研究については、関連する学会を中心に成果を報告するに至った。 スマートエネルギーシステムの深層強化学習手法としては、離散的動作空間および連続的動作空間の両方に対応するようデザインされた2つの深層強化学習アルゴリズムの応用や、特徴グラフを用いた汎用型の畳み込みニューラルネットワークについて研究を進め、成果を報告した。厳密な物理モデルによく適合するアルゴリズムは、訓練データにおけるエネルギーの需要と供給をよく説明した。 また、再生可能エネルギーを最大限に活用するための太陽光・蓄電池複合システムの最適運用計画を実現するための、重複分散グルーピングを自由に設定可能な分散最適化問題の定式化を行った.また、その数値実験に通してグルーピングや機器故障がシステム電力出力に与える影響や知見が得られた。その結果より、想定した小規模電力システムでは重複分散型が適当であることが分かった。 さらに、複雑なシステムにおいて、正常に動作するセグメントの機能のゆらぎによって稀に発生する創発的不具合の構造を検証するため、機能共鳴分析法を用いた(駆動系、制御系、電子系のシステムとしての)自動車の不具合事例分析を実施した。その結果、設計段階でのゆらぎ伝搬分析においてリスクを評価しうる可能性が得られた。 以上、当初計画の通りの成果が得られていることから、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、本研究課題は当初計画の通りに研究を進めるが、平成29年度までの進捗を考慮して以下の点を方策として推進する。 平成30年度の基礎設計の仕様作成と試作にあたっては、共同研究体による市場課題の分析結果を反映し、その課題を解決することを主眼にした仕様を策定することにより、研究完了時の研究成果の社会的貢献を最大化することを目指す。さらに、その仕様の妥当性に関する意見を広く集めるため、研究成果の国際会議などでの発表や、産業界向けの展示会出展を通じた公表を推進する。 また、現在までの進捗に挙げた関連技術の基礎研究結果は、小規模電力グリッドのネットワークによって全体を形成するバーチャルグリッドの基幹アプリケーションとして適合性が高いものであり、プラットフォーム設計の際には、これらの研究成果を活用可能な形で実装することを前提として進める.
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