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2017 年度 実績報告書

核酸安定同位体生態学の創成:遺伝情報と環境情報の統合へむけて

研究課題

研究課題/領域番号 17H06297
配分区分補助金
研究機関京都大学

研究代表者

木庭 啓介  京都大学, 生態学研究センター, 教授 (90311745)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2021-03-31
キーワード安定同位体 / 核酸 / 炭素同位体比 / 窒素同位体比 / 生態系
研究実績の概要

本研究の目的は、核酸を採取・精製し、その遺伝情報とともに炭素窒素安定同位体情報を採取することである。初年度はその第一歩である核酸の精製に取り組んだ。PCR増幅のためのDNA精製手法については多くの知見が蓄積されているため、その手法を用いたDNA精製を試みた。しかし、よく用いられる吸光度での判定では十二分にDNAが精製されていると判定されるDNA試料でも、安定同位体比測定に耐えられる精製精度を有していないことが、観測されるC/N比が予想されるDNAのC/N比よりも高いことから示唆された。例えばよく用いられているサケの卵巣由来のDNAについて、通常のプロトコルによる精製を何度となく施したものの、やはり炭素のコンタミネーションが見られた。そのコンタミネーションがタンパク質由来であると仮定した場合、炭素だけでなく窒素についてもかなりのコンタミネーションが生じていることが示唆された。当初より計画していた湿式酸化における炭素及び窒素コンタミネーションの低減化については、テフロン容器やガラスアンプルの利用による容器からのコンタミネーション、湿式酸化試薬の検討、さらには湿式酸化の別手法についての検討を進めているが、その前段階でのDNA精製については、予定していた通常のPCR増幅でのDNA精製手法だけで頼ることは難しいと判断した。そこで予定していた計画を前倒し、1. 磁性ビーズを積極的に利用する精製プロトコルの確立、さらに2. LC-IRMSの利用を見越した、HPLCによる核酸精製プロトコルの確立にも着手した。加えて、当初は予定していなかったが、トレーサー測定に供することができるIRMSが利用可能となったため、3. 15N、13Cラベルタンパク質混入実験によるコンタミネーション把握のためのトレーサー用IRMS立ち上げも開始した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度はDNAの精製を中心に取り組んだ。しかし、吸光度のレベルでは十二分にDNAが精製されていると判定される状態でも、安定同位体比測定に耐えられる精製精度は得られていないことが、測定される精製DNAのC/N比が予想されるDNAのC/N比よりも高いことから示唆された。
そこで予定していた計画を前倒しし、1. 磁性ビーズを積極的に利用する精製プロトコルの確立、さらに2. LC-IRMSの利用を見越した、HPLCによる核酸精製プロトコルの確立にも着手した。1.については、炭素のコンタミネーション(実際にはDNA精製中に容器や試薬などから溶出してくる炭素によるもの)があり、その検討を行った。2.については、2年目に行う予定であったがカラムなどを購入し、精製条件の検討を開始した。加えて3. 15N、13Cラベルタンパク質混入実験によるコンタミネーション把握のための、トレーサー用IRMS立ち上げも開始した。トレーサーの利用は当初予定していなかったが、トレーサー測定に供することができるIRMSが利用可能となったため、微量の同位体ラベルタンパク質を用いたコンタミネーションの検討が可能となる予定である。また、DNA精製後の処理について、当初より計画していた湿式酸化における炭素及び窒素コンタミネーションの低減化として、テフロン容器やガラスアンプルの利用による容器からのコンタミネーションの検討、湿式酸化試薬の検討、さらには湿式酸化の別手法についての検討を進めている。
これら全体を通じて、第1段階であるDNA精製については当初の予定より困難であることが判明し時間が掛かると思われるものの、それ以降の処理については前倒しで研究が進んでおり、全体としては当初予定していたレベルで研究が遂行されていると考えている。

今後の研究の推進方策

正直なところこれほどDNA精製が難しいとは考えていなかった。しかし最終的には、高濃度に濃縮したDNA溶液を、HPLCにて分離生成し、そのままonlineで湿式酸化することで、S/N比を高めた状態での測定が可能となるとかんがえている。このためにはLC-IRMSによるonlineでのDNA精製及び湿式酸化によるCO2そしてNO3-生成、CO2の同位体比測定、さらには生成したNO3-のフラクションコレクターによる回収、そして脱窒菌法によるN2Oへの変換、N2Oの同位体比測定、という多数の項目をクリヤーする必要がある。ただし、この内の2/3の項目についてはすでに当ラボにて実施しており、LC-IRMSを安定して運転できるようになれば、最終年度までには間に合うと予定している。このために雇用する博士研究員(H30年度の6月で現在雇用している方がことなる職種で本研究に参画することとなるため、他の方を雇用したいと考えている)、さらに連携研究員として参画していただいている静岡大学木村教授に研究分担者として参画していただくこととし、協力してDNA精製とLC-IRMSの利用を進めたい。当初予定していたとおり、オランダの研究室へ訪問し、LC-IRMSの安定運転についての情報提供を受けることも視野に入れている。
また、湿式酸化でのコンタミネーションについてはさらに詳細に検討する必要があると考えており、できるならば、UV照射のみで試薬を用いずに生成した核酸をCO2とNO3-まで分解したい。この検討のため、H30年度には、現有のTOC計にTNユニットなどを接続し、微量濃縮核酸試料をUVにて分解した際にどれだけの効率となるかを検討する予定である。さらには、他の研究機関の研究者と協力し、強力なUV分解ユニットを自作し、適用することも視野に入れて研究を進めることとする。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Nitrate is an important nitrogen source for Arctic tundra plants2018

    • 著者名/発表者名
      Liu Xue-Yan、Koba Keisuke、Koyama Lina A.、Hobbie Sarah E.、Weiss Marissa S.、Inagaki Yoshiyuki、Shaver Gaius R.、Giblin Anne E.、Hobara Satoru、Nadelhoffer Knute J.、Sommerkorn Martin、Rastetter Edward B.、Kling George W.、Laundre James A.、Yano Yuriko、Makabe Akiko、Yano Midori、Liu Cong-Qiang
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

      巻: 115 ページ: 3398~3403

    • DOI

      https://doi.org/10.1073/pnas.1715382115

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Nitrogen and oxygen isotope techniques to elucidate the uncovered functions in the ecosystems2018

    • 著者名/発表者名
      Keisuke Koba
    • 学会等名
      Ecosystem N cycling under climate change
    • 招待講演
  • [備考] ツンドラの生態系でも硝酸イオンは大切な窒素源だった

    • URL

      http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2017/180313_1.html

  • [備考] 森林に忍び寄る静かな異変 激増する窒素は地球に何をもたらすのか

    • URL

      http://shochou-kaigi.org/interview/interview_49/

URL: 

公開日: 2018-12-17   更新日: 2020-07-30  

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