研究課題/領域番号 |
18H05299
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
豊田 長康 鈴鹿医療科学大学, 公私立大学の部局等, 学長 (40126983)
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研究分担者 |
中東 真紀 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (00440785)
川西 正祐 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (10025637)
畠中 泰彦 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (10309601)
大井 一弥 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (40406369)
佐藤 英介 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (60211942)
鈴木 宏治 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (70077808)
葛原 茂樹 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 教授 (70111383)
郡山 恵樹 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (70397199)
西田 圭吾 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (80360618)
栃谷 史郎 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (90418591)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 高齢者 / フレイル / 亜鉛 / 嚥下 / 皮膚バリア機能 |
研究実績の概要 |
本年度は、栄養素として必須微量元素の一つである亜鉛に着目し、インフォームド・コンセントを確認した特別養護老人ホームの高齢者へ栄養改善(亜鉛を8週間摂取)を実施するヒト臨床研究を行った。亜鉛摂取後の腸内細菌叢を解析し、合わせて高齢者のフレイル状態や筋肉機能、皮膚機能への影響について調査した。 8週間亜鉛摂取した高齢者の下腿周囲長と亜鉛との関連性が示された。下腿周囲長は筋肉量の指標の一つであり亜鉛が高齢者筋肉量の維持に関与していることが示唆された。加えて、亜鉛摂取により有意に高齢者の乾燥肌が改善された。乾燥肌は皮膚バリア機能の指標であり、高齢者におけるバリア機能改善と亜鉛との関連性が考えられた。 亜鉛を摂取した高齢者の糞便を回収し、腸内細菌の解析を実施した。亜鉛摂取群と非摂取群を比較したところ、亜鉛摂取群において有意に減少する属として13種類の腸内細菌を確認し、亜鉛摂取によって有意に増加する属として6種類の腸内細菌の同定に成功した。今後、亜鉛による腸内細菌叢の変化と高齢者の筋肉や皮膚機能と関連性を検討していく予定である。 上述のヒト臨床研究に加えて、各種モデルマウスを用いて、栄養改善による腸内細菌叢の解析も実施した。ヒトエグサ由来ラムナン硫酸をマウスに7日間経口投与し、投与前と投与後で糞便解析を行った。その結果、細菌量や多様性に変化は観察されなかったが、有意に占有率が増加する属、有意に占有率が減少する属がそれぞれ観察された。また、グリチルリチンが大腸がんモデルマウスやメラノーマ肺転移モデルマウスにおいて予防効果があることを明らかにし、グリチルリチンによって影響を受ける腸内細菌の同定にも成功した。さらに、中鎖脂肪酸によるマウス脳内炎症を検討したところ摂取群で有意に改善を示し、これらと関連性のある腸内細菌叢の変化を確認した。中鎖脂肪酸は次年度にヒト臨床研究を実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特別養護老人ホーム入居者を対象としたヒト臨床研究を当初の計画どおり実施した。必須微量元素である亜鉛摂取による腸内細菌叢と高齢者フレイルの調査に関してはこれまでの報告がなく貴重なデーター・ソースとなることが考えられた。また、次年度に実施予定の中鎖脂肪酸を用いたヒト臨床研究の準備も進んでおり、計画における遅延はみられない。これに加えて、腸内細菌叢や腸内細菌代謝物と多臓器連関の分子機序を明らかとすべくモデル動物実験も開始し、いくつか興味深いデーターが得られつつあり、順調に遂行できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、昨年度に実施したヒト介入試験を踏まえ、中鎖脂肪酸摂取による腸内細菌叢の解析を実行する。本学の関連施設である社会福祉法人サムス会 白子の森ホームに入居している高齢者を対象に栄養素として注目されている中鎖脂肪酸を4週間与える介入試験を実施する。事前にインフォームド・コンセントにて承諾していただけた40名の被験者を中鎖脂肪酸摂取群と非摂取群に分ける。中鎖脂肪酸介入前後に糞便採取を行い、糞便から核酸抽出し、16SrRNA領域特異的プライマーを用いてPCR増幅、次世代シーケンサーで遺伝子配列の解析を実施する。得られた配列により系統分類解析を行うことでヒト腸内細菌叢の菌種組成を明らかとする。また、糞便中の短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)・胆汁酸(コール酸 、デオキシコール酸等)の解析を行う。中鎖脂肪酸は、脳、筋肉、皮膚、大腸、血管/血液といった様々な臓器に影響を及ぼすことが考えられており、中鎖脂肪酸介入試験後、筋肉機能の指標の一つとして高齢者の嚥下機能を解析する。認知症試験として簡易な認知度テストを実施する。皮膚バリア機能試験として非侵襲性の皮膚機能測定装置を用いることで、皮膚フレイル状態を反映するマーカー(皮膚の肥厚、角層水分量、経表皮水分喪失量など)を経時的に測定し、高齢者の皮膚フレイル状態の客観的な評価を実施する。また、フレイルとロコモのイレブン・チェックを実施することで、被験者のフレイル状態を把握する。これら中鎖脂肪酸によるヒト介入試験に加えて、亜鉛/中鎖脂肪酸/ラムナン硫酸/グリチルリチンといったフレイルやサルコペニア改善効果が期待される栄養成分を用い、モデル動物に一定期間摂取させた後のマウス腸内細菌叢解析も合わせて実施する。
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