研究課題/領域番号 |
20K20320
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
豊田 長康 鈴鹿医療科学大学, 公私立大学の部局等, 学長 (40126983)
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研究分担者 |
中東 真紀 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (00440785)
川西 正祐 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (10025637)
畠中 泰彦 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (10309601)
大井 一弥 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (40406369)
佐藤 英介 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (60211942)
鈴木 宏治 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (70077808)
葛原 茂樹 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 教授 (70111383)
郡山 恵樹 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (70397199)
西田 圭吾 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (80360618)
栃谷 史郎 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (90418591)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 健康寿命延伸 / 腸内細菌 / フレイル / サルコペニア / 亜鉛 |
研究実績の概要 |
本年度は、本学の関連施設である桜の森白子ホームに入居している高齢者に栄養成分を8週間与える介入試験を軸としたヒト臨床研究の得られたデータ解析を中心に実施した。ヒト介入試験の対象栄養素として必須微量元素の一つである亜鉛に着目し、特別養護老人ホームの高齢者に8週間亜鉛を摂取してもらい腸内細菌叢を次世代シーケンサーにより解析した。合わせて高齢者のフレイル状態や筋肉機能、皮膚機能への影響についての調査結果をまとめた。 8週間亜鉛摂取した高齢者の下腿周囲長と亜鉛との関連性が示された。下腿周囲長は筋肉量の指標の一つであり亜鉛が高齢者筋肉量の維持に関与していることが示唆された。加えて、亜鉛摂取により有意に高齢者の乾燥肌が改善された。乾燥肌は皮膚バリア機能の指標となっており、高齢者におけるバリア機能改善と亜鉛との関連性が考えられた。亜鉛を摂取した高齢者の糞便を回収し、腸内細菌の解析を実施した。亜鉛摂取群と非摂取群を比較したところ、亜鉛摂取群において有意に減少する属として13種類の腸内細菌を確認し、亜鉛摂取によって有意に増加する属として6種類の腸内細菌の同定に成功した。亜鉛摂取によって全体の細菌量には変化が認められなかったので、腸内細菌叢のパターンは腸内細菌叢の占有率の変化を示している。さらに、亜鉛栄養素によって改善効果が観察された筋肉量と乾燥肌と関連する腸内細菌種の探索を実施したところ、リケネラ科(Rikenellaceae)が下腿周囲長の増加に伴って菌占有率も増加する関連性が確認できた。一方、乾燥肌改善と関連性を示す腸内細菌の菌種は今回の条件下では見出すことができなかった。以上の結果より、高齢者で観察された筋肉量低下を改善するための新しい指標としての腸内細菌を同定し、高齢者フレイル予防の新しいアプローチを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度計画していた中鎖脂肪酸による栄養改善と高齢者の認知機能に関する試験は、新型コロナウイルス感染症の影響で、本学の関連施設である桜の森白子ホームである高齢者施設に研究チームが立ち入ることが不可能となり、計画を延期することとなった。 一方、高齢者で問題となるフレイルやサルコペニアの改善に寄与する栄養成分を用い、その分子機序解明のためのモデル動物実験を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の状況を見極めつつ、本学の関連施設である社会福祉法人サムス会 白子の森ホームに入居している高齢者を対象に中鎖脂肪酸を一定期間与える介入試験を実施する。定期的に糞便、糞便から核酸抽出し、16SrRNA領域特異的プライマーを用いてPCR増幅、次世代シーケンサーで腸内細菌の遺伝子配列の解析を実施する。得られた配列により系統分類解析を行うことでヒト腸内細菌叢の菌種組成を明らかとする。また、糞便中の短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)・胆汁酸(コール酸、デオキシコール酸等)の解析、血液はGC-MSによるメタボローム解析も行う。これら腸内細菌の解析と平行して、中鎖脂肪酸摂取前後の認知症試験、嚥下機能解析といった非侵襲性の機能試験で高齢者における栄養改善効果を評価する。 これら中鎖脂肪酸によるヒト介入試験に加えて、中鎖脂肪酸/亜鉛/ラムナン硫酸/グリ チルリチンといったフレイルやサルコペニア改善効果が期待される栄養成分を用い、モデル動物に一定期間摂取させた後のマウス腸内細菌叢解析も合わせて実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた高齢者に栄養改善を施し腸内細菌叢の解析を実施するヒト臨床研究が、新型コロナウイルス感染症の影響により特別養護老人ホームの高齢者施設への立ち入りが叶わない状況に陥った。 よって、ヒトが摂取可能な中鎖脂肪酸の購入、腸内細菌叢解析のための次世代シーケンサーの委託費用などヒト臨床研究に必要な経費を次年度に支出する予定である。ヒト臨床研究に合わせて実施する動物モデル実験にかかる費用も次年度に計上する。
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